第4回学習基本調査報告書
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第7章 評価・定期試験

第1節 通信簿

02年調査に引き続く傾向として、小・中学校ともにさまざまな材料に基づいて評価を行うようになっている様子とともに、評価の材料としてテストを重視する傾向の強まりも確認できる(たとえば、「単元末テスト」を「とても重視する」は、53.6%→71.1%)。    【Q8(学校)、Q9(教員)】

 1.1991年と2001年の改訂指導要録の特徴

 02年調査時点は、「観点別学習状況」だけではなく「評定」も「目標に準拠した評価」(いわゆる絶対評価)を行うことを明記した2001年指導要録改訂直後であった。実際、調査結果からも、相対評価から絶対評価への移行がもっとも大きな変化として観察できている。戦後の指導要録改訂の歴史を振り返った場合、まず重要な分岐点とされるのは1991年(平成3年)の改訂指導要録である。いわゆる「新しい学力観」という表現が初めて用いられ、その後の教育改革路線の方向を強く条件づけることとなった改訂である。

 この改訂の特徴は、(1)「目標に準拠した評価」(いわゆる絶対評価)による「観点別学習状況」が評価の基本となった。そのため、指導要録の記入欄の順番が変わり、相対評価による「評定」欄の前に、絶対評価による「観点別学習状況」欄がおかれた。(2)さらに、「観点別学習状況」に設定されていた4つの観点の記載順序が、従来の、「知識・理解」「技能」「思考」「関心・態度」から「関心・意欲・態度」「思考・判断」「技能・表現」「知識・理解」へと逆転した。(3)所見について、長所・短所の両面からではなく、子どもの長所を取り上げること、の3点である(金子真理子、2003「中学校における評価行為の変容と帰結」『教育社会学研究』第72集、109頁)。

  続く2001年(平成13年)改訂も基本的にはこの1991年改訂を基本路線としているが、冒頭で述べたように、2001年改訂によって、「評定」も絶対評価によって行うことになった。これが第二の分岐点といえるだろう。なお、「絶対評価」という用語は、「認定評価」「個人内評価」「到達度評価」という3つの意味で用いられてきたという(たとえば、田中・水原他、2005『新しい時代の教育課程』有斐閣など)。戦前の絶対評価はこの「認定評価」に相当する。今日の「目標に準拠した評価」は「到達度評価」に相当する。

  今回の調査においては、(1)学力調査や学力テストへの社会的な関心が高まったことに加え、(2)学校がさまざまな場面で説明責任を求められるようになり、そのことにともなって「評価」を行わねばならない場面が増えたことが大きな変化である(たとえば、学校評価など)。

  後述するように、実際、今回の調査結果からは、02年調査に引き続く傾向として、小・中学校ともにさまざまな材料に基づいて評価を行うようになっている様子が観察できる。とともに、評価の材料としてテストを重視する傾向の強まりも確認できる。1991年改訂指導要録によって、それ以前のテストのみ重視するという傾向から関心・意欲・態度を重視する―「知識偏重」からの離脱といえる方向へと評価の視点は変化したわけだが、今回の調査結果は、そうした変化の方向性を既定路線としつつも、同時にテスト「も」重視という評価理念が教員たちによって共有されていることを示唆しているのではないだろうか。ただしその場合、知識か意欲・態度かという二分法によるゆれ戻しとしてではなく、意欲・関心に加えて知識も重視する(しかも、意欲・関心以上に)という意味での知識重視の再来として位置づけることができる。
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