ベネッセ教育総合研究所 ベネッセコーポレーション
REPORT高等学校の進路指導に関する意識調査(2004) 次へ


2.指導を通じて感じる生徒の価値観の変化

(1)「自分」という「殻」に閉じこもった自己実現志向
 指導を通じて感じる最近の生徒の価値観について、「どのような価値観を持つ生徒が増えてきたか」、「その価値観は先生から見て望ましいと思えるものか」の2つの側面で回答していただいた。データ4は、縦軸を「増減の度合い」、横軸を「望ましいかどうか」とし、各質問項目に対する回答の平均値をプロットしたものである(具体的な数値についてはデータ8参照)。さらに、因子分析の結果も参考に、I〜VIIの7つのカテゴリを設けた。
データ4 高校教師が感じる生徒の価値観の変化
データ4
 高校の先生方から見て「望ましい」と思える価値観(横軸の数値の大きい項目)はI実用志向(役に立つ)II私的自己実現志向(個性・自分らしさ)III社会的自己実現志向(成長と社会貢献)などであり、反対に「望ましくない」とされたのは、VIモラトリアム(先延ばし)VIIネガティブな自己イメージ(どうせ自分なんて:自己効力不全)である。一方、IV個人的価値の優先Vかせぎ志向は3.00付近にあり特に望ましいとも望ましくないとも言い切れない。
 該当する生徒が「増えているか」については、I実用志向の平均値が3.60〜4.01(カテゴリ平均3.77:データ8)という高い値であり、高校の先生方が今回の調査項目の中では最も「増えている」と感じているカテゴリである。また、自己実現志向(仕事や学びの中で自分を活かす)の中でも、自分の興味や個性の伸張を重視するII私的自己実現志向の平均値は3.4前後であり、「増えている」と感じている先生方の方が多い。この2カテゴリは、先生方の「望ましい」という想いと、生徒の実態として「増えている」感覚とが合致しているようである。IV個人的価値の優先(公的な価値観よりも私生活に重きを置く)についても「増えている」とする度合いは高く、I実用志向に次ぐ。
 一方で、社会の中で自己の役割を果たそうとするIII社会的自己実現志向は、「望ましい」の数値は高いのだが、当てはまる生徒が「増えてきている」かについては3.00を切っており、減っていると感じておられる先生方の方が多い。先生方の「願い」と生徒の「実態」にギャップが見られるカテゴリと言える。
 高校生は、「自分にとっての居心地の良さ」を追求したがったり、「自分らしさや個性の伸張」を図りたい気持ちは強いものの、「社会における自分が果たす役割」つまり、役割期待に応える意識が低くなってきていると先生方の目に映っているようである。
 社会的な自己実現を図るためには「自分にとっての価値」と「社会から求められる価値」 の結節点を探り、実現可能な(手の届きそうな)目標設定を行い、その時点で設定した目標の実現に向けて挑戦していく必要がある。しかし、前章データ2で見たように、「社会から求められる価値」を追求しようとする高校生(「7.希望する職業についての知識」「8.最近の産業・職業の知識」を持っている)は1〜2割程度に過ぎず、また「自分にとっての価値」が分からない(「5.進路選択上重視すること」「6.自分の能力・適性」が分からない)生徒は3割前後で97年と比べても増加傾向にある。高校の先生方の認識はこの実態を反映していると言えるだろう。
 また、「望ましくない」とする先生方の方が多かったVIモラトリアムVIIネガティブな自己イメージの各項目に当てはまる生徒が増えてきたかどうかについては、平均値が「以前と変わらない」から「少し増えてきた」の間(3.37〜3.71:データ8)であり、やや増加傾向にあると認識されている。


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