ベネッセ教育総合研究所 ベネッセコーポレーション
REPORT高等学校の進路指導に関する意識調査(2004) 前へ次へ



(3)「実用志向」を梃子(てこ)に「社会的自己実現志向」の育成を
 III社会的自己実現志向については、先生方の多くが望ましい価値観だとお考えなのだが、その想いに反して当てはまる生徒は全体としてはやや減少しているとの認識が持たれている。先生方の「願い」と生徒の「実態」にギャップが見られる項目である。ベネッセ教育総研が別途実施した大学生・高校生の実態調査の結果から今後の育成のヒントを探ってみたい。
 データ6は、大学生の勤労観(仕事を通じて何を実現したいか)の学年比較を示した。就職活動を体験した(している)4年生になると「社会的自己実現志向」が大きく伸びることが確認できる。さらに就職内定を獲得している学生では、この傾向がより一層顕著である。学生は、実際の就職活動(社会で求められる価値観・能力要件との対峙)の経験から、職業を通じて自分が社会に価値を提供すること(役割期待に応えること)の意味が理解しやすくなるようである。就職活動で得られるこの「気づき」を、キャリア教育によって体感させることができれば、学生にとっては、学校と社会の接続をよりイメージしやすくなるであろうし、社会で必要とされる能力・スキルの準備学習(レディネス形成)の効果が今以上に高まることが期待でき、いわゆるフリーター問題の解決にもつながるのではないだろうか。
 また、大学生の自己評価では、「社会的自己実現志向」が「私的自己実現志向」よりも高く、今回の調査で明らかになった高校の先生方が抱く高校生像との違いが見られる。これが、高校生と大学生という成長段階の違いなのか、それとも教師による評価と学生(生徒)の自己評価とのズレなのかは、今後の検証課題としたい。
データ6 <参考> 大学生の勤労観 - 仕事を通じて何を実現したいか -(学年比較)
データ6
 今回の調査で先生方が現在の高校生の持つ価値観として「望ましく」かつ「増えている」と感じておられたのは「実用志向」である。実際に高校生の学習動機づけに対する反応をデータ7で確認してみても、F実用志向(将来の仕事や生活に役立てたいから学ぶ)は最も高い項目群に属しており、その有効性が期待できる(反応が高いのはC報酬志向F実用志向であるが、実用志向は学校類型を問わず40ポイント以上の数値を示している)。
 さらに、実用志向は進路意識の発達段階との関係も強いことから、進路学習の成果を教科学習に転移させる際の重要概念と考えられる。教科学習においては「その教科や関連する学問の社会における役立ち」について時折話題として取り上げる。進路学習の際には「社会で役立つ(求められる)知識・スキル」が「なぜ求められるのか(背景・理由)」、「高校生活のどのような活動を通じて養うことが出来るのか」などを考えさせる。そういった働きかけを通じて、生徒達は「社会が求める価値」と自分の成長とを重ね合わせてイメージすることが出来たり、「社会において自分が果たせる役割」を探求するきっかけを得るのではないだろうか。
データ7 <参考> 学習動機づけへの反応(高1生徒)
データ7
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