都立専門高校の生徒の学習と進路に関する調査

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第3部 高校入学後の学校生活/
第2章 教師への信頼はどうすれば高まるのか

2.仮説の設定

常識的な見解であるが、生徒の教師への信頼を高めるには手厚い授業実践が有効となるだろう。手厚い授業実践とは具体的には、積極的に質問や意見を言える授業や、教師が個別のアドバイスや手助けをしてくれる授業や、少人数授業(本稿では便宜的に生徒数25人以下の授業)のことである。これらの授業が行われることで、生徒は教師の知識や技能に信頼を抱く機会が増し、さらに教師に対して親近感を覚えると考えられる。

しかし手厚い授業実践は、教師生徒比が小さい(つまり教師が相対的に多い)学校においてこそ可能になるはずである。ベネッセ教育研究開発センター(2007)などの調査結果が示すように、教師は極めて多忙な状況にある。教師が足りない状況でこれらの手厚い授業実践を行うことは困難であると考えられる。

一方で、教師生徒比は授業実践とは独立にも生徒の教師への信頼を規定すると考えられる。なぜなら、教師生徒比が小さい学校においては、教師が比較的ゆとりをもって教材研究や授業準備を行ったり、生徒とコミュニケーションを取ったりできると考えられるためである。群馬県教育委員会(2006)の調査では、多くの教師が教材研究や授業準備を計画しているものの、必要な時間が確保できない現状が示されている。したがって、分析枠組みは図1になる(仮説については後述)。

図1:分析枠組み
図1:分析枠組み

なお、本稿における「教師への信頼」は3つの尺度で構成される。1つ目は、知識や技能の所持に対する信頼、すなわち「担当科目に関する知識や経験が豊富な先生が多い」と感じているかどうかである。2つ目は、知識や技能を伝達する能力に対する信頼、すなわち「教え方が上手な先生が多い」と感じているかどうかである。そして3つ目は、(知識や技能ではなく)人格に対する信頼、すなわち「親しみやすい先生が多い」と感じているかどうかである。この3つで信頼を網羅できるわけではないが、生徒にとっての教師への信頼は主にこの3つであろう。以上の議論から導かれた仮説を整理する。

●理論仮説1:手厚い授業実践は教師への信頼を高める。
○作業仮説1−1:積極的に質問や意見を言える授業、先生が個別のアドバイスや手助けをしてくれる授業、生徒数が25人以下の授業を多く受けている生徒ほど、担当科目に関する知識や経験が豊富な先生が多いと感じている。
○作業仮説1−2:積極的に質問や意見を言える授業、先生が個別のアドバイスや手助けをしてくれる授業、生徒数が25人以下の授業を多く受けている生徒ほど、教え方が上手な先生が多いと感じている。
○作業仮説1−3:積極的に質問や意見を言える授業、先生が個別のアドバイスや手助けをしてくれる授業、生徒数が25人以下の授業を多く受けている生徒ほど、親しみやすい先生が多いと感じている。

●理論仮説2:手厚い授業実践は教師生徒比が小さい学校において行われやすい。
○作業仮説2−1:教師1人あたりの生徒数が少ない学校ほど、積極的に質問や意見を言える授業が多く行われている。
○作業仮説2−2:教師1人あたりの生徒数が少ない学校ほど、先生が個別のアドバイスや手助けをしてくれる授業が多く行われている。
○作業仮説2−3:教師1人あたりの生徒数が少ない学校ほど、生徒数が25人以下の授業が多く行われている。

●理論仮説3:学校の教師生徒比は授業実践とは独立にも教師への信頼を規定する。
○作業仮説3−1:授業実践の効果を統制しても、教師1人あたりの生徒数が少ない学校の生徒ほど、担当科目に関する知識や経験が豊富な先生が多いと感じている。
○作業仮説3−2:授業実践の効果を統制しても、教師1人あたりの生徒数が少ない学校の生徒ほど、教え方が上手な先生が多いと感じている。
○作業仮説3−3:授業実践の効果を統制しても、教師1人あたりの生徒数が少ない学校の生徒ほど、親しみやすい先生が多いと感じている。

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