都立専門高校の生徒の学習と進路に関する調査

    PAGE 2/9 前ページ 次ページ

第4部 高校卒業後の進路・将来展望
第1章 専門高校における職業的レリバンス意識と進路不安

2.先行研究の検討

まず、先行研究の検討によって、本稿の意義を論証する。

質問紙調査データをもとにして高校生の進路不安を正面から分析した先行研究としては、本田(2005, 2006)と佐藤(2006)が挙げられる。

本田(2005, 2006)は、高校生の進路不安の規定要因を分析している。そこでの進路不安とは、「どんな仕事をしたいのかよくわからない」「自分の進路について今でも悩んでいる」「社会でうまくやっていけるか不安だ」といった3項目からなる合成変数である(アルファ係数は0.5401)。分析の結果、男子では専門学科(高校)ダミー変数は進路不安を低減すること、専門学科ダミー変数は進学志望を低減することなどが明らかにされている。

一方、佐藤(2006)は、本田(2005, 2006)と同一のデータをもとにして、「どんな仕事をしたいのかよくわからない」「自分のやりたい仕事をしぼるのはまだ早いと思う」「自分の進路について今でも悩んでいる」「社会でうまくやっていけるか不安だ」といった4項目からなる合成変数を「着地不安」と呼称し、その規定要因を分析している(アルファ係数は0.6271)。分析の結果、専門学科(高校)ダミー変数は「着地不安」を低減すること、「勉強は就職に役立つ」という意識は「着地不安」と無相関であることなどが明らかにされている※3

以上のように、本田(2005,2006)と佐藤(2006)は、高校生の進路不安を正面から分析した重要な先行研究であるものの、次の2つの問題点がある。

第1に、進路不安に関する変数の取り扱いにやや疑問が残る。本田(2005, 2006)と佐藤(2006)は同一のデータを分析しているにもかかわらず、進路不安に関する合成変数の操作的定義が異なる。また、いずれの先行研究においても、進路不安に関する合成変数のアルファ係数はそれほど高いとはいえない。したがって、進路不安に関する変数については、合成変数を作成する前に、個別の項目を丁寧に分析しておく必要があると思われる。そこで、本稿では、本田(2005, 2006)と佐藤(2006)で共通に使用されている進路不安に関する変数として、「どんな仕事をしたいかよくわからない」「自分のやりたい仕事をしぼるのはまだ早いと思う」「将来、社会でうまくやっていけるか不安だ」を取り扱う※4

第2に、専門高校の内部における職業的レリバンス意識の分析が十分に行われていない。本田(2005, 2006)と佐藤(2006)では、専門高校に在学することで普通科高校に在学するよりも進路不安が低減されるということ、高校生全体でみると「勉強は就職に役立つ」という意識は「着地不安」と無相関であることは明らかにされている。しかし、相対的にみれば、職業と密接に関連した教育を行っている専門高校の内部で職業的レリバンス意識が高まると進路不安に対してどのような影響が及ぶのかといった点は十分に明らかにされていない。そこで、本稿では、専門高校の生徒を対象にした分析を行う。

<注>
※3 一方、佐藤(2006)と異なり、伊藤(2006: 8)は、職業的レリバンスの認知(本稿でいう職業的レリバンス意識)と「着陸不安」(本稿でいう「進路不安」)は負の相関関係にあることを指摘している。

※4 厳密には、これらの項目と本稿の分析データの項目との間でワーディングが微妙に異なっている部分がある。しかし、両者の差は回答結果を左右するほどのものではないと考えられる。なお、「自分の進路について今でも悩んでいる」という項目は本稿の分析データには存在しないため、分析できない。

     PAGE 2/9 前ページ 次ページ
目次へもどる 調査・研究データ