都立専門高校の生徒の学習と進路に関する調査

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第4部 高校卒業後の進路・将来展望

 第4章 都立専門高校の生徒の大学進学希望とその規定要因


岡部 悟志(Benesse 教育研究開発センター研究員)

  <要約>
  • 本稿の目的は、都立専門高校から大学進学を志す生徒の特徴を把握することである。
  • 普通科進路多様校との対比から、両者に共通する特徴として、現在の校内成績が良好な生徒ほど、高学歴の親を持つ生徒ほど、大学進学を希望することが確認された。
  • ところが、専門高校の生徒に限って、大学進学実績がよいことを理由に現在の高校に入学した生徒ほど、その後も大学進学を強く希望する傾向があり、かつ、その背景には、親学歴の影響があることがわかった。
  • 都立専門高校からの大学進学の背景には、高校選択時より進行する親子間の学歴下降回避行動(吉川 2006,2009)が存在する可能性がある。

1. 問題関心

トラッキング理論に従えば、専門高校の本来的な機能は、入学時の学力が決して高いとはいえない生徒を、卒業後に就職という進路へ水路づけることにある。実際、1990年頃までは、全国の専門高校の卒業生の7〜8割が就職を選択していた。ところが近年、その専門高校からの大学進学者が増加している。2000年以降、卒業後に就職する専門高校の生徒は5割前後に落ち込み、その一方で、これまではあまり想定されていなかった大学への進学者が徐々に増加傾向にある(図1)。東京都教育委員会の『公立学校統計調査報告書「進路状況調査編」』を参照すれば、都立専門高校においても、全国と同様に大学進学者が増加傾向にあり、現在では、およそ2割の生徒が卒業後に大学へ進学している実態がわかる。

専門高校からの大学進学者が増加した背景には、いくつかの要因が考えられる。中村(2006)は、この現象を説明する外的な環境要因として、(1)入学枠の拡大と少子化の影響で大学に入りやすくなっていること、(2)不況の影響のため高校卒業後の就職が困難であることを挙げている。さらに、進路多様校の生徒を対象とした調査データの分析から、近年の推薦入学の普及が専門高校の生徒を大学進学へ向かわせている可能性を提示している。ここから中村は、「職業教育中心の専門高校と一般の大学とを推薦入学が平易に繋いでしまったことは、高大接続の観点から再度検討すべき課題なのかもしれない」(中村2006: 141)としているが、その一方で、これまで卒業後は就職という進路にほぼ限定されていた専門高校の生徒に対して、新たに大学進学という「セカンド・チャンス」(シム2004)を与え、さらなる教育アスピレーションを醸成しているとすれば、そのことじたい望ましいことなのかもしれない。ただし、そのようなセカンド・チャンスが専門高校の生徒にとって開かれたものなのかどうかは、必ずしも判然とはしていない。このような問題関心から、本稿では、都立専門高校の生徒の大学進学希望の規定要因を明らかにすることを目的とし、分析を進めていく※1

図1:専門高校の生徒の大学等進学率と就職率の推移(1955〜2009年度、全国)
図1:専門高校の生徒の大学等進学率と就職率の推移(1955〜2009年度、全国)

<注>
※1 分析にあたって、専門高校に含まれる4つの学科(「工業科」「商業科」「農業科」「その他の専門学科」)のうち、「その他の専門学科」に属するサンプルを除いている。「その他の専門学科」の生徒の大学進学希望率が、その他の3学科と比較してかなり高かったためである。これは、「その他の専門学科」の専門高校には、比較的新しい進学型の学校が含まれるためと思われる。

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