若者の仕事生活実態調査報告書−25〜35歳の男女を対象に−

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第2部 分析編/第1章 働く若者の世界

第2節 仕事の充実感について

1.はじめに

第1部2章2節では、「仕事のやりがいや成長実感」「仕事量や給与・待遇などの勤務条件」「職場の人間関係」など、仕事をしていて感じることをたずねた9項目を用いて、「仕事の充実感」を表す指標を作成した。「仕事の充実感」に関する属性別の傾向で特徴的な点は、就業形態ごとの違いはあまり大きくないことであった。すなわち、正規社員であっても、非正規社員であっても、自営自由業であっても、仕事の充実感の高低は、それほど変わらない。しかし、働く若者がどんな点にやりがいや充実感をもって仕事に取り組んでいるかは、その人のもっている価値観や姿勢、あるいはその人が置かれている立場や役割によって異なると考えられる。つまり、充実感の「量」に大きな差はなくても、その「内容」には違いがあると考えられる。

この節では、以上のような関心に基づいて、インタビュー調査から得られた「仕事の充実感」の内容について分析を行った。するとその結果、仕事の充実感の具体的な中身は多種多様であり、どんなことに充実感をもっているかは、人によってさまざまであった。しかし、その多種多様な中にも、「仕事の充実感」につながる共通の要素もあると考えられた。

分析としては、アンケートデータ(「仕事の充実感」と「仕事をする上で重視すること」)の回答結果、およびインタビューデータ(「どんな点に仕事のやりがいや充実感を感じるか」という主旨の質問に対する回答)を用いる。そして、両者を整理しながら傾向をまとめ、若者の「仕事の充実感」につながっている要因は何かを明らかにしていきたい。

2.アンケートの分析

第1部2章1節では、働く若者が「仕事をする上で重視すること」をまとめた。ここでは、その中から若者全体に選択された割合が高い順に10項目を取り上げ、仕事をする上でどんな点を重視しているかによって仕事の充実感の違いがあるかどうか調べてみた(図1−2−1)。

充実感がもっとも高い「充実感・高」の割合をみてみると、「人や社会の役に立つこと」を重視しているグループが46.6%ともっとも高く、「休みが多いこと」を重視しているグループが20.3%ともっとも低くなっている。「充実感・高」の割合が高いグループから順にみてみると、社会貢献を重視する項目(「人や社会の役に立つこと」)、自己実現を重視する項目(「自分のやりたい仕事であること」「自分の個性や能力が生かせること」「仕事を通して資格や技術が身につけられること」)、職場環境を重視する項目(「長期間安定して働けること」「職場の雰囲気がよいこと」「自分のやりたいこと(趣味など)と両立できること」「地理的条件がよいこと」「給料が高いこと」「休みが多いこと」)の順であった。「人や社会の役に立つこと」を選択した若者の数は他の項目と比較して少ないが、社会貢献を重視するグループは自己実現を重視するグループよりも、「充実感・高」の割合が高くなっている。自分のためだけでなく、人や社会のために働きたいという価値観・動機づけが、仕事の充実感に結びついているのではないかと考えられる。

図1-2-1:「仕事をする上で重視すること」と「仕事の充実感」の関係

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