「データで考える子どもの世界」

 若者の仕事生活実態調査報告書−25〜35歳の男女を対象に−

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解説・提言4 「子どもの自立」は「親の自立」 ―自立に向けた5つの条件とは―

●自立のための5条件

子どもの自立のための5条件を考えてみよう。

(1)心身の健康
(2)身辺生活の自立
(3) 精神的自立
(4)豊かな人間関係を結ぶ力
(5) 経済的自立

の5つの要素である。それでは、次に1つひとつその内容を詳しく考えてみよう。

(1)心身の健康

 〜家族とのコミュニケーションが一番の栄養〜

まず何よりも子どもの健康である。身体だけでなく心の健康も含む。「食育」という点からみると、家庭ではどのような食事を子どもに与えているのだろうか。近年、子どもの肥満が問題となっている。また、学校での昼の給食が唯一のご馳走という子どももいる。ファーストフードなどのカロリー過剰の食事では問題。そして、楽しく家族一緒に食を共にする「食育」も大切。要は身体とともに食事を通して心も豊かに育てることが欠かせない。家での食事の風景の絵を子どもに描かせると、「孤食」の絵が多いことに気づく。すなわち、子どもがたった1人で食事をする絵である。親はいない、家にいても親はテレビを見ている。子どもは1人で食事という絵が目立つ。思春期になり心の病気がさまざまに表面化する子どもがいるが、幼児期からの親子の温かい心のふれあいを大切にしながら親子でコミュニケーションを行い、子どもの心を大切に育ててきたかどうかがその時に問われる。心の健康は身体の健康にも通じている。摂食障害(拒食、過食)など、心の病気から身体の健康にも大きな影響を及ぼすことも多い。自立にはこのようにまず心身の健康が欠かせないことは明らかである。

(2)身辺生活の自立

 〜家事は身辺自立の第一歩〜

自分の身の回りのことは自分で管理できることである。家事をしない子どもが日本ではとくに目立つ。家族の一員として、食事の支度、食器の洗浄、風呂やトイレの掃除、自分の部屋の掃除、洗濯物の整理、ふとん(ベッド)の片付けなど、家庭内で子どもができる仕事はたくさんある。しかし、勉強することのほうがより大切で、家事をさせる時間があったら勉強をさせたいと考える親が多いのが実態のようである。では、「家庭の役割」とは何だろうか。それは、何よりもまず子どもたちに「生活を教える」ことではないだろうか。家庭は勉強を教えるための学校ではない。たとえ勉強はできても、自分の身の回りの管理すらできない、頭でっかちな子どもに育ててはいないだろうか。夏のキャンプなどで子どもの様子をみると、身の回りの整理整頓もできない、お米も一度もといだことがないといった基礎的生活能力に乏しい子どもが実に多いことに驚かされる。これは、いかに日頃から家庭で親が生活教育を怠っているか、家事をさせていない証だと思われる。

家族の一員として自分の役割と責任を果たすことは、将来社会のなかで役割、責任を果たすことの基本につながるものである。このように、自分で身辺生活管理ができることは、子どもたちの自立ともっともかかわる本質的な部分であり、ここから精神的な自立、自分への自信にも連動する重要な自立の要素であることを忘れてはならない。

(3)精神的自立

 〜あえて口を出さない、手伝わない努力を〜

人に頼らず、自分自身で考え判断し行動する力である。いつまでも親は側につきっきりで子どもに指示や助言を与えることはできない。いつか子どもは親から離れて、自分で問題の解決を行わなければならない。そのためには、幼い時から繰り返し繰り返し、子どもに考える力、問題解決する力をつける訓練が必要である。親が先回りして、「ああしなさい、こうしなさい」と指示している限り、子どもは何も考えようとしなくなることは当然である。指示待ちタイプの若者の増加はこうした家庭での原因が存在しているといえよう。

これから、少子化のなかで親に必要なことは、あえて手伝わない、あえて先回りして子どもに指示しないなど、行き過ぎた世話や保護(過保護)、行き過ぎたおせっかい(過干渉)を止め、「子どもに任せる」ことである。また、買ってやろうと思えば買える物でも、あえて買わない、物を与えない努力、親の忍耐力が必要である。忍耐強くねばり強い子どもは、忍耐強い親のもとで育つ。親自身が「ああ、面倒くさい」「ああ、もう、うるさい」「まあ、いいやこれくらい」とストレスに簡単に負けてはならない。育児は親にとって毎日ストレスと我慢の連続であるが、そこに親として人間としての成長の種が存在している。子どもに任せ、やらせてみるなかで、失敗から学ぶことは多く、また成功すれば子どもはそこから「やればできる」と強い自信が持てるようになるだろう。とにかく、口や手を出さず、子どもを信頼して任せ、親は我慢して見守ってやってはどうだろうか。

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