ベネッセ教育総合研究所
学校改革は、子どもをしっかり見るところから
梶田叡一
京都ノートルダム女子大学学長
梶田叡一


かじた・えいいち●1941年島根県生まれ。国立教育研究所、大阪大学教授、京都大学教授などを経て、現職。教育改革国民会議委員、中教審委員など歴任。著書は、『真の個性教育とは』(国土社)、『教育評価』(第2版増補版、有斐閣)、『学校学習とブルーム理論』(金子書房)、『〈お茶〉の学びと人間教育』(淡交社)など多数。
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■学習指導要領の改訂にあたって
学校改革は、子どもをしっかり見るところから
学習指導要領改訂をどう受け止め、学校は何から始めればよいか。中教審の委員であり、学校評価の第一人者である梶田叡一先生にきいた。
京都ノートルダム女子大学学長
梶田叡一


学習指導要領の拘束性はなくなったけれど、手放しの規制緩和ではありません
 今回の学習指導要領(以下、指導要領)の改訂は、確かに「一部」です。しかし、これによって学習指導要領の性格づけが事実上変わってしまったという点では、非常に画期的です。
 つまり、これまでの指導要領にはなかった「発展的な学習」に関する内容が加えられ、歯止め規定は「最低基準」を示すものとなりました。結果として、これまでの指導要領の拘束性が吹っ飛んだのです。
 これまでは、指導要領にない内容を教えたり、教科書を使わなかったりする先生は、極端な場合、処分の対象にさえなりました。しかし、これからは、指導要領や教科書を逸脱して教えたからといっても、それだけで処分の対象とはならない。文部科学省として求めるのは、「指導要領は最低基準だから、それに見合うだけの学力をすべての子どもに保障すること」だけです。
 こういう自由化に対して、早くも「格差」を懸念する声が挙がっています。しかし、何も、文部科学省は、手放しで規制緩和をしているわけではありません。管理教育か規制緩和かという二分法で考えるのは、素人議論というものです。
 格差には2種類あります。いわゆる正規分布曲線のように生じる上と下の格差(図1)は放っておいてはいけませんが、マスタリーラーニング(学力保障)の考え方からくる、「最低線だけはどの子にも保障するけれども、さらに伸びる子どもには天井を設けないで、どこまでも伸ばすという考え方(図2)」、そういう格差は私は不可欠と考えています。
図
 授業時間数も、これまでは指導要領通り実施するのが標準だといわれましたが、これからは、標準ではあるけれども、それを下回ることなく、必要ならば、学校の実情に応じて、それ以上実施すべき、なのです。


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