ベネッセ教育総合研究所
特集 豊かな学力の確かな育成に向けて
田中勇作
ベネッセ教育総研
主任研究員
田中勇作
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「学びの基礎力」が学力の伸びしろを広げる
「学力向上のための基本調査」から見えてきたこと

「確かな学力」は、「教科学力」と「学びの基礎力」「生きる力」が相互に関連し合うことで育まれるのではないか?ベネッセ教育総研では総合学力研究会を組織し、教科学力に影響を与える要素として、「学びの基礎力」という概念を導入。2003年2月、小5生と中2生を対象に「学力向上のための基本調査」(注1)を実施した。調査・分析を中心になって進めた田中勇作に、調査から見えてきた学力向上の視点などをきいた。
注1 大阪教育大学助教授・田中博之先生、大阪市立大学大学院助教授・木原俊行先生の監修のもとに「総合学力研究会」を組織して調査した。
調査対象/小学5年生1,707人(23校)・中学2年生2,023人(16校)、および調査対象校の教師(小56人、中71人) 調査時期/2003年1〜2月
調査内容・方法/学校通しによる、国語・算数(数学)・英語に関する学習到達度調査、および学習意識調査(自記式アンケート)


「学力」をトータルにとらえるために
 ベネッセ教育総研で「学力向上のための基本調査」(以下、総合学力調査)を始めたきっかけは、「総合的な学習の時間」(以下、「総合的な学習」)の成果を測ることでした。
 「総合的な学習」がスタートした当初は、「子どもたちの目が輝いてきた」というような曖昧な表現で、その成果を見取っている学校が少なくなかったのです。しかし、「『総合的な学習』の成果も、教科と同様、学習を通して何を身につけさせたいかという観点から測っていかなくてはならないのではないか」という問題意識が生まれ、大阪教育大学の田中博之先生のご指導のもと、「総合的な学習」で身につけたい21世紀型の学力の枠組みをつくりました。そしてその力をつけるためにはどのような活動が有効であるのかを調査・研究してきました(注2)。
注2 「21世紀型学力を育む総合的な学習を創る」(ベネッセ教育総研 2002年)を参照。

 一昨年くらいから「学力低下問題」がクローズアップされてきましたが、そこで問題にされている学力が、知識・理解を中心としたきわめて狭い範囲でしかとらえられていないのが気になりました。
 現場の先生方にお話をきいてみますと、教科学力の習得を支える学習意欲や、学習習慣、人間関係、社会的体験が年々低下してきていることを危ぶんでおられました。私たちも、そちらのほうこそ問題にしなければならないと考え、そのためには、21世紀に生きる子どもたちが身につけるべき総合的な学力像を探る必要があるという結論に達したわけです。
 具体的には、教科学力と学習意識を併せて調査することで、「確かな学力」は「教科学力」と「学びの基礎力」「生きる力」が相互に関連し合うことで育まれるのではないかという仮説を検証しようとしました。その結果として、学力をトータルにデザインすることをめざしました。


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