ベネッセ教育総合研究所
特集 豊かな学力の確かな育成に向けて
三町 章
三町 章
荒川区教育委員会指導室長
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実践事例(2)
東京都荒川区
学習到達度調査からみえてきた課題に
どう取り組んでいるのか
独自の学力調査(注)を行い、学校別の到達度を公表したことで全国に知られた荒川区の動きは、03年10月号で紹介した。第2弾は、調査結果からどのような課題を見つけ、どのようなアクションを起こしているのか、同教育委員会三町章指導室長にきいた。

 「学力向上のための調査」。「学習到達度調査」と「学習意識調査」で構成されている。2002年度の調査は03年2月19日に実施、小学校では、全学年6,534人が受検。


算数の達成度が高いのは、習熟度別学習の成果
 荒川区の学力調査では、学年・教科ごとに区が独自に設定した目標値への到達度をみた。
 のように、達成率がほぼ70%を超えており、特に算数が、基礎75.6%、応用70.2%と高い数値を示している。これは、「学習意識調査」()とも符合していて、「算数が好き」の割合が高く、とりわけ、3年生から上昇する。
図
 これに対して三町章指導室長は、「学力向上策として2001年度から算数の習熟度別学習に取り組み、02年度からは全小学校で実施してきました。その結果が現れたのだとしたら、非常にうれしい」と、率直に喜びを表す。
 ただ、課題はいくつもある。まず、学年が進むにつれて達成率が低くなっている。さらに、学校間の格差も大きく、達成率で16〜21ポイントの差が出てきている。
 「教委では、特に数値が落ち込んでいる学校には、優先的に正規採用の教員を加配するなどの授業支援策をとっています。また、家庭学習をほとんどしない子が平日で各学年1割以上いるというデータを深刻に受け止めて、個に応じた課題を作ったり、放課後に補習をするなど、きめ細かな支援を各学校が始めています」
「読む力」「書く力」を育てるために読書環境の整備
 観点別の達成率を子細にみると、国語では「読む力」「書く力」に、算数では「数学的な考え方」に課題がある。
 「これを『読書量』と照らし合わせてみると、一因がわかります。1〜3年生は月平均10冊以上読むのに、4年生からは半減し、6年生では3.2冊になっています。
 この傾向に対して、それまで32校中19校しか取り組んでいなかった“朝の読書”に全校が取り組み始めました。国語を校内研究のテーマにする学校も増えてきました。 さらに、学校図書館の整備状況を見直し、蔵書の充実や司書の配置、研修も検討しているところです。もちろん、それが整うまで手をこまぬいてはいません。すでに公立図書館が、各学校に職員を派遣してブックトークをしたり、集団貸し出しをするなどバックアップしています。また、ボランティアによる読み聞かせ活動が前年の何倍もの頻度で行われています」
夏休みの取り組みが活発に
 夏休みの様相も一変。区教委では、学校のエアコンなどを充実させて、夏休みも子どもが活動できるような環境づくりをしたが、そのためか、補習教室、パソコン教室、漢字検定へのチャレンジなど学力向上のための取り組みに、各学校平均10日くらい開放。延べ6千人以上が参加。人数だけみてみても、02年度の1.5倍になった。
 こうした取り組みの成果は、03年度末に行われた第2回の調査で検証中である。
 PDCAの取り組みが回り始めた同区の取り組みを今後も注目していきたい。


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