ベネッセ教育総合研究所
特集 教師の「授業力」向上のために
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交換授業から始まった学年担任制
 GTにしたきっかけは、ある学年で行った交換授業。
 「2教科のある単元に限って、交換授業をしてみたのです。そのとき、学級を開いて指導するよさを感じました」
 翌年の00年に、区の教科担任制推進校の指定を受けたことではずみがついた。授業の質が上がり、子どもたちの学習意欲も増すなかで、学年で協力すること、学級を開く大切さを教師自身が感じるようになった。そこで、打ち出されたのが「内にも外にも開かれた学校、教師の指導力向上」という学校経営方針。その具体的な実践がGTだった。
 前任の校長から引き継いで、さらなるシステムの完成を目指す松本校長は、この経緯を振り返って語る。 「GTというのは、人間関係がとても大事です。教師同士が十分に話し合える関係を築くことで、はじめてメリットが発揮できる。そのためには、まず教師が問題意識を共有し、自主的に取り組む姿勢が必要。校長のひと声から始めるよりも、教師からのボトムアップこそが成功のカギといえるでしょう」
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▲朝の会や帰りの会など生活指導の場は、「学年の部屋」に児童全員が集まり、
全担任教師で指導する。学級の壁をなくしたことで、子どもたちには
「学年意識」が芽生え、人とのかかわりも開かれたものに変わりつつある


緊張感が指導力向上につながる
 GTで何がどう変化したのだろうか?
 一つ目は、ねらいどおり、児童を多面的に見ることができるようになった。複数の教師が声をかけ、児童一人ひとりの個性を見いだそうとする指導は、結果として子どもの自信を引き出し、安心できる環境をつくり出している。
 二つ目は、教師の意識が大きく変化した。「子どものことを話す時間が圧倒的に増えました。また、教師同士が切磋琢磨し、新たなことにチャレンジしようという風土が生まれました」(伊藤教諭)
 三つ目は、教科の分担による効果だ。担任一人が受け持つ教科が半分になり、その分、教材研究の時間が確保できる。また同じ授業を2回実施することになるので、授業の質の向上につながった。
 生活指導の面でも、教師が学び合うことで、やる気を引き出す声のかけ方や状況に応じた指導など、技術面だけでなく、子ども理解の観点も含め、指導全体の質が向上した。
 こうした教師の変化を可能にした要因を、伊藤教諭はこう分析している。
 「自分の指導力を意識せざるを得なくなったのです。1日に何度も担任三人が同じ指導の場に立つと、自分の指導が他の教師の目にさらされます。また、児童や保護者からは、アンケートで評価されます。こうした緊張感のなかで、教師も努力して指導力を上げざるを得なくなってきた。その意味では、GTそのものに、教師の指導力を上げ、学校の体質を変えていく必然的な要素があるといえます」
 GTを完成させ、同校の特色として定着させていくため、目下取り組んでいる重点課題は、GTの効果検証である。
 「最終的に、教師の指導力がついたかどうかは子どもの学力向上と社会性の向上に表れます。その成果を表現する手段を模索しているところです。GTの実績を目に見えるかたちで証明できてはじめて、地域・保護者の方の確かな支持を得られると思っています」(松本校長)


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