ベネッセ教育総合研究所
立山小学校
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板書一つでもコースに合わせた工夫を
 子どもが「楽しい」と感じる授業ができた大きな要因は、コースに合った指導法を、問題の難易度ばかりでなくさまざまな面から考え抜いてきたことだ。
 中筋小学校では現在、2年生以上の算数と3年生以上の国語で習熟度別授業を実施している。コースは学年全体を基礎コース、標準コース、発展コースの三つに分けて展開。実践の中心となってきた教務主任の村上元良先生はこう語る。
「例えば板書なら、基礎コースの子どもは、文字が多いというだけでやる気をなくしますから、授業のポイントをできるだけ絵や実物などで示し、発展コースの子どもにはいろいろな友だちの考え方を示して自分で必要なものを読みとらせるようにしました。1時間の配分でも、基礎コースは前時とのつながりに、発展コースは話し合いの部分に時間をかけたりしました」
 02年度から始めたこうした積み重ねをもとに、04年度は各コースごとの「問題解決的な学習」のモデル図を作成。授業をビデオに撮って、コース別にどんな内容に何分程度かけて展開しているかを測り、それをもとにした各コースの時間配分モデルを作成した(図1・2)。
▼図1 習熟度別授業における各コースの時間配分モデル。
基礎コースは「課題提示」や「まとめ・練習」に、
発展コースは「集団解決」に時間を使っていることがわかる
図表
▼図2 習熟度別授業における問題解決的な学習のモデル図。
標準コースを中心にすえながら、各コースの授業づくりの視点を示す
図表
 同時に、各コースを児童が選ぶために、単元ごとに行っているオリエンテーションも工夫。例えば5年算数の小数(かけ算)では、小数の歴史を紙芝居にし、小数が必要な生活の場面を寸劇にして、子どもたちの興味を引き出す(写真1)。
写真
▲写真1 5年生の算数、小数の授業のオリエンテーションのようす。
生活に小数が役立つ場面を先生が寸劇で再現
 成果は数字にも現れた。事前テストと単元末テストの結果を比べると、とくに基礎コースの児童の伸びが顕著だった(図3)。保護者の反応も上々。アンケートをとると、該当学年の保護者の98%が習熟度別授業に満足しているという結果が出た。
図表
▲図3 習熟度別授業によるコースごとの変容。
事前テストで既習事項の理解度を測り、小単元終了時にその小単元
の理解度、単元終了時にその単元の理解度をそれぞれ測る。
とくに習熟度の低いコースで伸びが大きい
 このような大きな成果を上げられた背景には、中筋小学校がコース分けそのものではなく、一人ひとりの個性や学び方に応じた指導を大切にしてきたことがある。 「基礎でも発展でも、教える価値は同じです。それを一人ひとりの状況に応じて実現するためのかたちが、『習熟度別』ということではないでしょうか。教育の目標は、学力を上げることだけではなくて、人づくりにあるのですから」(村上先生)
 この考えは、中筋小学校が以前から取り組んできた生徒指導の流れをくむものである。


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