ベネッセ教育総合研究所
特集 教室を超えて生きる国語力
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国語力低下の対策にはまず読書環境の整備が重要
  十分な語彙がなければ会話も断片的になり、きちんとした文章を書くこともできない。実際、20〜30分の時間を与えても1行くらいの文章しか書けない子どもが、小学校高学年になっても1割程度いる、と有元氏は指摘する。本来、国語力とは、普段からたくさん読んだり聞いたりすることで豊かな語彙を身につけ、それを人とのかかわりのなかで活用する言語活動を通して養われていくものだ。その機会が減ったとなれば、国語力は低下して当然だろう。
  「日常生活のなかで豊かな日本語の環境に恵まれていたか否かで、子どもの国語力が大きく二極化しています。算数や理科は学校に入ってから習うものですが、国語は、入学前に周囲の大人との会話や読み聞かせなどを通じて養われる言葉の力が土台となっており、生活のあり方が非常に大きく影響するものです。それだけに、国語力の低下は算数や理科の学力低下よりも、ずっと深刻、かつ構造的な問題なのです」(有元氏)
 では、国語力低下に歯止めをかけるには、どうすればよいのか。有元氏は家庭・学校での読書環境の改善が必要と語る。
  「子どもが大人と日常的に話をする環境を取り戻すには、少子化や地域コミュニティーの衰退など、社会全体が抱える構造的な問題を解決しなければなりません。しかし、これを学校の力だけで実現するのはかなり難しい。それよりもまず、子どもたちが本に親しむような試みを入学時から早期にしていくことが現実的です」(有元氏)
  例えば、朝の時間を利用した読書や読み聞かせなどはすでに多くの学校で取り組まれ、成果を上げている。
  また、このような取り組みは決して我が国だけにとどまらない。アメリカなどの諸外国の例を見ても、国語力向上を重要な課題ととらえ、そのためにそれぞれに工夫した取り組みを行っている。
図表
 「学校の図書館を利用することも大切です。図書の充実のほか、専任の学校司書を置くなど、子どもたちに図書館を利用させる工夫が大切ですね」(有元氏)
  有元氏はまた、マンガも時には有効に利用すべきだと言う。マンガと一般の本との境目にあるような、絵が多く、文章が少ないものを入り口にしながら、徐々にさまざまな本の世界へと導くことが重要だ。


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