ベネッセ教育総合研究所
特集 教室を超えて生きる国語力
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国語力を高めるための実践のポイントを整理
 では、そうした試みは具体的にどのように行われているのか。3年生の国語の授業を例に見ていこう。
1 意欲を引き出すための工夫
 この授業では、教科書の冒険物語をもとに、想像を膨らませながら少しずつ設定を変え、自分で新たに物語をつくっていく。「想像したことを楽しんで文章に書く」「話のつながりに注意しながら、内容にふさわしい表現の仕方を工夫して文章に書く」のがねらいだ。宮園小では国語科に限らず、授業の最初にこうした「ねらい」(児童へは「めあて」)を明確にすることで、子どもたちの意欲を引き出している(写真1)。
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▲写真1 3年生の国語の授業。
まず単元全体の流れをまとめた表を示し、今日の授業のめあてなどを伝える
  また、この授業では本物の作家気分を味わわせるため、完成後の作品を本にして図書室に置き、読み聞かせボランティアの方々を招待して「完成記念パーティ」を行うことも約束。子どもたちはそれを楽しみに創作活動に励むなど、意欲を生むための工夫が随所に施されていた。
2 「一人学習」で考える力を育てる
  大まかなストーリーは、4、5人の班ごとで話し合って決め、その後、各自で表現を工夫しながら文章を組み立てていく。このように、一斉授業のなかでも一人でじっくりと考えて書く「一人学習」の時間を、授業中に必ず設けている。これも、国語科に限らずあらゆる教科で行われている取り組みだ(写真2)。
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▲写真2 「一人学習」の時間では、私語もなく、全員が集中して課題に取り組んでいる
 「『話す』『聞く』も大切ですが、ただ口々に発表するだけだとうわべの考えにとどまりがちです。自分の考えをしっかり持たせるためには、やはりじっくり思索させ、書かせることが大切だと思います」(平田はつみ校長)
3 「伝え合う場」の工夫
 書いた文章は互いに読み合い、感想を発表させている。みんなの前で発表し、意見を交流させることによって、考えをさらに高め、深められる。読んだ感想を言い合うときには、具体的にどこがよかったかを伝え、教師も「強調したい部分にかぎかっこを使ったのがよかったんだね」など、児童の発した評価の言葉をとらえて再確認する。こうした「振り返り」を通じて、子どもは自分に力がついたことを実感でき、「書こう」という意欲をさらに高められる。
4 五つの言語意識を養う
 この伝え合う活動のなかで大切にされるのが同校で設定している「五つの言語意識」だ。国語科の学習指導案では、「言語活動における伝え合う場の言語意識」として、以下の五つの意識をどのように育てるのかを記入する欄がある(図1)。
▼図1 3年生国語科 学習指導案(抜粋)
図表
 だれに伝えたいのか(相手意識)、何のために伝えたいのか(目的意識)、どのような状況で伝えるのか(場面・状況意識)、どうやって伝えればいちばん効果的か(方法意識)、話し手はわかりやすく伝えていたか・自分は自らの考えと比べながら人の話を聞けていたか(評価意識)、などの視点を教師は常に意識しながら児童への指導や声かけを行う。それによって、教師は児童ができたときにそれを拾い上げ、評価することができ、児童はそれを改めて意識し、生活場面で生かすことができる。例えば、放送委員が昼の校内放送で話す内容も、だれに、なんの目的で聞いてもらうのかを意識しながら決められた時間内にわかりやすく話せるようになるなど、子どもたちの伝え合う力は格段に向上した。


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