ベネッセ教育総合研究所
東明小学校
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「授業のかくし技」にデジタルコンテンツを組み込む
では、どのような授業をすれば子どもを「出演者」にし、集中させることができるのか。渡辺先生は、「授業の三つのかくし技」という観点から次のように整理している。
かくし技1「舞台に引き込む」
 子どもたちを観客から出演者へと変えるために、例えば、子どもが書いたものを教室の前方に持ってきてもらい、ひと言ほめてから返すなど、子どものやる気を引き起こす。
かくし技2「活動の七変化」
  子どもが授業に飽きないように活動に柔軟な変化をつける。例えば分数を書いた封筒の中に、同じ値の小数をカードに書かせて入れ、大きさ比べのゲームをするなど、児童が観客としてではなく能動的に考えられるようなしかけをつくる。
かくし技3「ゆさぶる」
 「わかったつもり」の曖昧な点を突いてドキドキさせる。例えば、発表内容に聞き手へのクイズを入れさせたり、逆に聞き手からも質問させたりして、漠然と話すだけ、聞いているだけ、という状況をつくらない。  これらの「かくし技」を使うことで学習意欲を中断させることなく、リズムのある授業を組み立てるのが渡辺先生の授業だ。デジタルコンテンツを使う際も、そのメリットと使用目的を明確にしたうえで、かくし技としてうまく授業に取り入れている。
5年生算数『平行四辺形と三角形の面積』 活用例
学習内容
次の4つの学習のめあてを達成する方法として、デジタルコンテンツの「提示利用」、「子どもが利用」、デジタルコンテンツを使わない「従来の方法」のどれがふさわしいかを見極め、授業を展開する。

(1) 平行四辺形を等積変形して長方形にすることができれば、公式を使って面積を求められると考える…思考
(2) 平行四辺形や三角形の底辺と高さの組み合わせを探し出し、それを使って面積を求めることができる…表現・処理
(3) 三角形の面積は平行四辺形や長方形の面積の半分であることがわかる…知識・理解
(4) 変形を楽しむなかで、底辺と高さが同じなら面積は変わらないというきまりに関心を持つ…関心
今回使用したツール
『@発見島』
●ベネッセコーポレーションのネットワーク型の教科学習ソフト。論理的な見方・考え方を育てるための試行錯誤シミュレーション型教材、資料を読み取る力を育てるデータベース型教材をはじめ多数の教材で構成されている。

『さんすうランチ3』
●平面図形ツール、立体図形シミュレーション、楽しく学べる算数教材で構成された小学校で大人気の算数ソフト。 05年3月に『さんすうランチ4』にバージョンアップした。
写真[提示利用] まずはこれまでの復習を教室前方に示された『さんすうランチ3』の作図画面で確認。重要な公式と単位がイメージとともに短時間で頭に入る。

[従来の方法] 平行四辺形の紙を実際に自分ではさみで切って面積を確かめてみる。自分なりに考えたら、先生のところに行って説明する。
写真[子どもが利用] 今度は子ども自身がパソコン上のはさみを使って平行四辺形の一部を切り取って移動し、長方形の面積と同じであることを確かめる。「本当にそうなのかな?」と疑っていた子も、何度も自分で画面上で確かめて納得。
写真[提示利用] 「底辺×高さ=平行四辺形の面積」であることをさまざまな平行四辺形の形を見ながら確認。自分が実際にはさみで切って確かめた後なので、しっかり頭に入る。
[従来の方法] ここでわかった公式を暗唱して覚える。関所をつくって一人ひとりに質問し、正解すれば席に帰って実際に公式を使ったプリントの練習問題に挑戦。
写真[子どもが利用] 「これが全部12p2」と言われてびっくり。さらに子ども自身がパソコンの画面上で、12p2の平行四辺形を何通り作れるか挑戦する。「教科書では面積を求めなさいと言われるけど、これは逆のパターン。こうした『ゆさぶり』をかけられると子どもは一生懸命考えます」(渡辺先生)
実践の工夫1 とぼけたり、じらしたりで 子どもたちの意欲をかきたてる
  プロジェクターで全員に提示する際に、わざと間違ったものを出してとぼけてみたり、やり方を面白そうに見せながら、子どもが「早くやりたい!」と言うまでじらすことで、子どもたちのデジタルコンテンツに取り組む意欲をかきたてる。
 「子どもは先生が間違えるのが大好きです(笑)。普段手を挙げない子まで喜んで声を出します。そうすると、もう『観客』ではなくなってるんですね。子ども自身がパソコンに向かうときは『こんなことできるよ、やってみたいやろ』とじらすことで子どもたちは喜んでやり始めます」(渡辺先生)
実践の工夫2 バーチャルな体験だけでなく 必ず自分自身の体験もセットにする
  面積の大きさを理解させる際に、まず平行四辺形の紙をはさみで切って考えさせる。そうやって必ず自分の手を動かして体験させたうえで、デジタルコンテンツで確認させる。
 「実感を伴わない知識は、その瞬間のペーパーテストの成績は良いかもしれませんが、子どもの頭の中に残りません。もっとやりたくなるような実際の体験をさせたうえで、不足をデジタルコンテンツで補うようにして初めて、記憶が知識として定着するのです」(渡辺先生)


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