教育現場の挑戦 [学力向上の取り組み]神奈川県立横浜市立さつきが丘小学校

神奈川県 横浜市立さつきが丘小学校

1992年に開校。周辺は会社員家庭の多い住宅地。約10年にわたり、全校を挙げてコミュニケーション能力の育成に取り組んでいる。保護者・地域の教育力を導入することにより、開かれた学校と保護者・地域との連携を目指す。学校支援のボランティアは、年間およそ100名にも上る。

渡辺正彦

校長 渡辺正彦先生

児童数 601人
学級数 21学級
所在地 〒227-0053 神奈川県横浜市青葉区さつきが丘8番地
TEL 045-974-1091
FAX 045-972-6874
URL http://www.edu.city.yokohama.jp/
sch/es/satsukigaoka

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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教育現場の挑戦 学力向上の取り組み

神奈川県 横浜市立さつきが丘小学校

コミュニケーション能力を、すべての教科学習に生かす

 KEY POINTS 実践のポイント
 1 コミュニケーション能力の育成に必要な8つの力を各強化で高めていく。
 2 校内研修を定期的に実施し、取り組みの継続性を高めていく。

朝の15分を活用してコミュニケーション能力を育成

 さつきが丘小学校で全校挙げてのコミュニケーション能力育成の取り組みが始まったのは、1997年度のこと。その背景には、自分の意見を自分の言葉で表現する力が社会的により強く求められるようになったこと、そしてその半面、子どもたちが友だちと心を開いて話し合うことが少なくなってきているとさつきが丘小学校の教師が感じ始めていたことがあった。
 そんなとき、当時の教務主任がコミュニケーション能力の改善について研究活動を行っている有元秀文氏(現・国立教育政策研究所総括研究官)の考えにふれたのをきっかけに、取り組みがスタートした。以来、国語の時間から、「総合的な学習の時間」、そして各教科でと、活動の場を広げながらコミュニケーション能力育成の研究を積み重ねてきた。そのコミュニケーション能力を八つの力に細分化し、必要な力として設定した(図1)。さつきが丘小学校では、教育のあらゆる場面で、この八つの力を伸ばすことを心がけている。

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図1
 例えば、「総合的な学習の時間」では、八つの力の学年系統表を作成した(図2)。低・中・高学年それぞれでの目標を明確にして取り組みを進めている。評価は、子どもたち一人ひとりにファイルを用意して、自己評価用のカードを綴じ込ませるなどポートフォリオの考え方を導入。これを続けることで、子どもたちは自分で学びの過程を振り返ることができ、また、学年が上がって担任が変わってもこれまでのようすを把握できる。
図2
各教科では、さらに詳細にコミュニケーション能力の育成のための取り組み内容を定めている
 さつきが丘小学校の活動を象徴するのが、「さつきの時間」だ。朝の15分間、各クラスでコミュニケーション能力の育成に取り組む。人間関係づくりのためのゲームなどを通して、コミュニケーション能力育成の下地をつくる。
 内容は学年やクラスで工夫しているが、スピーチ、インタビュー、話し合い活動を系統立てて6年間の学習内容を設定し、実践している。
 例えば5年生の場合、あるクラスでは一つの言葉について知っていることをグループごとに話し合い、発表する「百科事典をつくろう」や、子どもたちにある人を紹介する三つの文章を書かせ、それを一つずつ聞かせながら、だれのことを言っているかを推理させる「スリーヒントゲーム」などを行う。これらの活動のなかで教師は、「なぜそう思ったの?」「どんなことなのかもっと詳しく」などと発表や質議応答につながるアドバイスを送り、コミュニケーション能力の育成につなぐ工夫をしている。
 また、さつきが丘小学校では読書を通してコミュニケーションを楽しむ「読書へのアニマシオン」も行われている。2年生では、「お話を語りましょう」という取り組みを実施(写真1)。「わらのうし」という本を教師が読み聞かせ、十分に関心を持たせ、次に一人1冊を与えて読ませる。そのあと、本を回収し、教師からさまざまな場面について一人ずつ全員に、「そのあとどうなったでしょう?」などと質問。自分の言葉でお話を語らせることで、集中力を高め、理解する力を引き出し、想像力を豊かにさせている。国語の授業を「読書へのアニマシオン」に充てるのは年に1回だが、学級の実態に応じて増やしたり、前述の「さつきの時間」で実施することもある。
 「子どもたちには質問が少し難しいかなと心配したんですが、感想をきいたら、『難しかったけど、おもしろかったから、またやってみたい』という声が聞かれました」(2年生担任・綾澄子先生)
 読書への意欲や興味を持ってもらうことも「読書へのアニマシオン」のねらいだ。

写真1
写真1 2年生の「読書へのアニマシオン活動」。教師の質問に答える児童と、その意見に聞き入る子どもたち。

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