ベネッセ教育総合研究所
オピニオン 「教育の指導力」「家庭の教育力」「学校の経営力」が子どもの学力を豊かに伸ばす
田中博之
大阪教育大 助教授
田中博之


たなかひろゆき●1960年生まれ。
大阪大人間学部助手、大阪教育大専任講師を経て現職。
専門は教育工学、教育方法学。
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Key note
豊かな学力の確かな育成に向けて
ベネッセ教育総研主催「学力育成を考えるフォーラム2004」より
子どもの学力を伸ばしていくための「確かな教育力」をどう築けばよいのか…。
この課題解決に向けて、2004年9月に東京都足立区において、ベネッセ教育総研主催の「学力育成を考えるフォーラム2004」が開催された。
フォーラムで議論された中から、学力向上に向けての論点を整理してご紹介する。


総合学力を構成する3つの「学力」
 ベネッセと共同で実施している総合学力研究会(注1)では、これからの教育のあり方として、「豊かな学力の確かな育成」というキャッチフレーズを作りました。

(注1)ベネッセ教育総研が、大阪教育大・田中博之助教授、大阪市立大大学院・木原俊行助教授の監修のもとに組織した研究会

この方が、文部科学省の提唱する「確かな学力の育成」よりもよいのではないかと思っています。総合学力研究会では、学力を「教科学力」「学びの基礎力」「生きる力」の3つに分けて捉えています。(図1)
■図1 総合学力のモデル図(ベネッセ教育総研作成)
※詳細は速報版「学力向上のための基本調査2003」参照
図1
 特に今回、提案しているのが「学びの基礎力」という力です。「学びの基礎力」には4つの領域があります。
(1)「豊かな基礎体験」とは、豊かな自然体験、生活体験、社会体験を積み、基本的な生活習慣や人間関係ができていること。
(2)「学びに向かう力」とは、知的好奇心とか自己肯定感などの学びに向かうエネルギー。
(3)「自ら学ぶ力」とは、いわゆる自己学習力ですが、家庭学習の習慣があるかというようなこと。
(4)「学びを律する力」とは、集中力や学習状況を自己評価する力、学習環境を整理整頓できるかという力です。 
 最近は、子どもの体験が不足している、家庭での学習習慣が確立されていない、家庭での生活習慣も乱れている、学校に来てからも規律が守れない、学習ルールが守れないなど、基礎的な問題が目立ってきています。この「学びの基礎力」をおろそかにしていると、「教科学力」も「生きる力」も伸びてきません。
 総合学力研究会の提案する学力調査では、こうした考えに基づいて教科学力調査と意識調査で幅広く学力を測っている点が、他の学力調査と画期的に違う点です。


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