ベネッセ教育総合研究所
オピニオン 「教育の指導力」「家庭の教育力」「学校の経営力」が子どもの学力を豊かに伸ばす
大野裕己
大阪教育大講師
大野裕己


おおのやすき●1973年生まれ。
九州大大学院人間環境学研究科を経て2001年4月より現職。専門は学校経営学。
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学校の経営戦略を明確にし、
地域と共同で学力向上を目指す


学校独自のビジョンを作る
 私は学校経営を専門に研究していますが、校長先生のマネジメントそのものが子どもの学力にかなり影響しているというデータもあり、学力向上の点からも広く「学校経営」という考えが必要になってきていると思います。
 最近の教育改革の流れは、総合的な学習、習熟度別学習など、学校が意図を持って独自に改革を進めていく、というものです。今までは、上からの指示通りに下ろしていくやり方でもよかったのですが、今後学校経営をうまく行っていくためには、自分たちで学力観を設計し、育てたい子ども像を中心にビジョンを作り、そこから自己診断、学校評価をしたうえで、習熟度や少人数学習などの教育活動を意図的に導入・展開していくことになるのではないかと思います。
 今の教育改革では、やらなければならないメニューが多く、あれもこれもという感覚で進めていくと、かなり苦しくなってしまいます。それをなくすために学校の中でビジョンを作り、それを達成するためにどんな活動が有効なのか、また今年1年で力を入れなければならない活動は何かなど、詳細に検討し、優先順位を決めて進めていくことが大切になってくると思います。

学校の教育計画を公開し地域と家庭を巻きこむ
 大阪府の学校改革を例に少しお話ししたいと思いますが、大阪府では特に学校自己診断と学校協議会の仕組みを生かした学校改善を大切にしています。ある学級崩壊が起こった学校の事例ですが、校長の強いリーダーシップのもと、最初は授業交換や授業評価など、問題を校内で共有できる活動を導入しました。先生たちは、そうした環境の中でとにかく数年間は、「授業改善」に全力で取り組みました。しばらくたつと、先生方が学校としての教育観を共通理解するようになり、家庭や地域との協力のもとに児童の学力を伸ばしたいと考えるようになりました。その後、学校協議会制度をうまく使い、学校協議会に集まった人の中から分科会を作って、学校外での活動を充実させていったのです。学校側はそれまで自分たちの守備範囲をかなり広くとらえていたのが、地域と役割分担をしながら学校全体を活性化していこう、という考え方に変わっていきました。地域の人たちも自分の役割に責任を持ち、主体的に学校に関わってくださるようになりました。
 このように、学校として、意図して学校のビジョン・教育計画を作っていき、家庭や地域も巻き込んでバランスのよい教育を作っていく。それが、結果的には授業に専心できる体制を作ることにつながり、子どもの多面的な学力を伸ばしていく土台ができ、学校を活性化することにつながるのではないでしょうか。


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