ベネッセ教育総合研究所
Case Study 学力調査を生かした実践事例
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教師や生徒の意見(授業評価)を授業改善に取り入れる
 ところで、新しい取り組みに対して教師間に温度差や実践の違いはなかったのだろうか。片柳中学校では、学期ごとに「わかるアンケート」という名の授業評価を全生徒に行い、授業がわかりやすいか、どんな点がわかりにくいかを聞いている。学年ごと、教科ごとに集計し、結果をすべての先生に公表している。生徒の意見もそのままファイルされ、職員室に置かれており、誰もが閲覧できる。ときどき生徒のシビアな意見も垣間見られるが、
 「なるほどと思うところもあり、教師はみな真摯に受け止めています。生徒の意見が数値として具体的になったことで生徒の声を以前よりもきちんと聞くようになり、先生方の意識も変わってきました。本当に顕著です」(佐藤義則校長)
 もう一つ、教師間で実践しているのが見取り授業。これは4月に1回と各学期に3回ずつ、年10日間行っている。学校公開の期間に先生たちが他の先生の授業を見て、アンケートに授業に対する意見を書く。アンケートは教務が回収し、そのままの形でコピーして全員に配付するので、誰が何を書いているのかすぐにわかる。
 「『見取り授業』は、他の先生のノウハウを自分のものにしていく上で大変効果的です。ベテランの先生の場合、自分の授業スタイルを変えたがらない事が多いのですが、『わかるアンケート』や『見取り授業』で互いに刺激し合うことで、自然と授業改善をしやすい雰囲気ができあがってきたのだと思います」(斎藤先生)
 とはいえ、新たな取り組みには教師にとって必要な時間数が増えてくる。その日のうちに自己評価表のチェックをしたり、また空き時間を利用して、テストの採点や教材研究もしなければならない。そこで、時間を少しでも効率的に使えるよう、プリント冊子の後ろのほうに自己評価表やテストの結果をまとめ、短時間で採点や評価ができるように工夫した。
 「授業改善は負担になるものでは長続きしません。『わかるアンケート』や『学力調査』も、継続して授業研究に生かしていきたいと思っています」(佐藤校長)
図5
■図5 片柳中学校での指導改善サイクル
 
「学力調査」の活用と工夫
(1)校内作成調査と民間作成の調査で結果の比較
定期考査や自己評価表、各学期ごとに実施している「わかるアンケート」で生徒の課題や指導の課題は把握できるが、外部の学力調査を活用し、別の視点から子どもの学力や意識をみることで、結果に説得力を持たせることができる。
(2)達成率をもとに授業内容を組み直す
学力調査の結果でもっともチェックするのは達成率だ。生徒の弱い部分に力を入れて、補充を組んでいる。「苦手な子の共通点をしっかり頭の中に入れて授業に生かしたいですね。そして、達成率が高い部分はあまり時間をかけず、達成率が低いところに時間をかけることによって、子どもたちの『わかる』が増え、全体の達成率も上がると思うんです」(斎藤先生)


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