ベネッセ教育総合研究所
Case Study 学力調査を生かした実践事例
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キャッチフレーズは「失敗をおもしろがろう」
 理科の合同授業は03年度、6月と12月と1月の第3水曜日に、校区の3つの小学校6年生が第十中学校に登校し、計3回、2時間ずつの授業が行われた。
 「理科は常に新しい自然現象との出会いがあり、発見や驚きを何度も経験できる教科です。そのため、学年の異なる子どもたちが自ら課題を見つけて働きかけ、失敗をくり返すなかでお互いの理解を深め、自分を高めていくのには最適な教科と言えます」(中井校長)
 第十中学校区では、理科だけではなく英語と情報の小中一貫カリキュラム開発も推進しているが、その3つに共通しているのは、失敗が糧になる学習活動であるということだ。言い換えれば、予想に反した結果にこそ問題解決の糸口があるということを、子どもたちに身をもって実感させることが可能な活動だという。
 そうした狙いを端的にあらわしているのが、小中一貫のキャッチフレーズとして掲げられている「失敗をおもしろがろう」という言葉だ。理科教育に関しては、大阪教育大の森一夫名誉教授と大阪府立工業高等専門学校の中崎義晃教授をアドバイザーに迎え、中学校の理科教師と小学校6年生の担任3名・理科専科1名、小・中学校の校長・教頭で理科部会を編成。子どもたちが興味や関心を持って取り組めるカリキュラムを考え、実験に重きを置いた授業を展開することとした。
 図2は「不思議の世界を探ってみよう」というテーマで実施された、昨年度の実験内容だ。
図2
■図2 小中合同授業のテーマと具体例
紙飛行機やソーラーバルーン、ペットボトルロケットなど空気で動くものを制作したり現象に触れたりすることで、空気のさまざまな性質を理解できるカリキュラムになっている。これらのメニューは、理科部会を構成する12名の教師たちが、1〜2時間で結論が出てコストがかからないと思われるものを、インターネットや書籍を調べて選んだ。
 2年目の取り組みとなる04年度は、子どもたちの理科に対する意識の変化を探るアンケート調査を実施したうえで、指導案を検討。合同授業では、「自由研究」に取り組む班と、水溶液の研究など通常授業の発展的内容について学習する班に分けて行うことを決めた。そして、11月と1月に計6回予定されている合同授業(図3)に向けたカリキュラムづくりと準備が進められている。
図3
■図3 小中合同授業の2年目の取り組み方針と計画
 「自由研究では、身の回りで見つけた課題を子どもたちの力だけで解決させていきます。問題を追ううちに、もっと調べてみたいと思うことが出てくるかもしれませんし、その場合は同じテーマを見つけた子どもたちでグループを組み、05年度へと研究を引き継がせることも考えています。学習に継続性を持たせれば、研究のテクニックも深まるはずです」(中井校長)


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