ベネッセ教育総合研究所
地方自治体がひらく新しい教育
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2 身近な地域を見直し問題意識を育てる
 取り組みには、「総合的な学習の時間」を充てることにし、「学年別」「縦割り」の二つの学習で構成される多層的なプログラムを練り上げていった。
  学年別の学習では、地域の住民を講師に招き、さらに生徒も地域へと足を運んで一つのテーマを追究する。例えば、04年度の2年生の前期は、篠山東中学校区の高齢者問題を通し、「心を育てる」をテーマに取り組んだ。
  授業では、まず高齢者福祉にかかわる人を教壇に招き、車椅子での介護の仕方など、実践的な知識を学んだ。その後の体験学習に必要な知識を習得するとともに、問題意識を深めることに重点を置いた学習だ。また、夏休みには高齢者施設を訪問。高齢者と会話を交わし、介護に参加する体験を通じて、高齢者を取り巻く問題に、それぞれが考えを巡らせた。さらに、そこで学んだ内容を台本に仕立て、文化祭で演劇を上演するという課題も与えた。そのように、知識と実践とをバランスよく配して構成されている。
  一方、02年度から取り入れた縦割りの学習では、異年齢集団の活動を通して、上級生と下級生の協力、思いやり、支え合いなどの仲間関係を培うとともに、さらに地域社会へと深く踏み込んでいく。活動の内容は、1年目が消防団の協力を得て、生徒が放水訓練などに参加する「生徒消防団活動」、2年目が自分が住む地域にある山林を歩き、自然を観察する「里山探検隊」、そして3年目の04年度は、校区に点在する歴史的・文化的な遺産を自転車で巡り、それらの特徴や成り立ちを知ることで、故郷を愛する気持ちを養う「篠山東文化発見」を実施した。篠山東中学校では05年度以降、この三つの活動を年度ごとに順に実施することにしている。つまり、生徒は卒業までに、三つの活動すべてを体験することになる。
  04年度に実施した「篠山東文化発見」では、生徒が希望する“遺産”を選んでグループを組んだが、その際には、自分が通った小学校の校区以外の地域を選択させた。篠山東中学校の校区は、六つの小学校の校区で構成されるが、それぞれが広いため、多くの生徒は自宅周辺の地域についての知識しかない。そのため、他地域への理解を促すねらいがあった。また、見学ポイントには、その“遺産”に詳しい地元住民が待機し、生徒への説明を担当するなど、地域住民との交流を効果的に盛り込みながら展開された。
  こうした一連の活動を通して、生徒たちは「何もないところだと思っていたのに、意外にすごいことがいっぱいある」など、それまでに知ることのなかった地域への理解も深めている。
▼図1
図1
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写真
▲一人暮らしの高齢者の自宅を訪ね、
自分たちになにかできることはないかを聞いていく
写真
▲地元の消防団のもと、消化訓練を体験する篠山東中学校の生徒たち


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