ベネッセ教育総合研究所
学校現場が長期休業を意義ある機会とするために 夏休みの指導のポイント
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theme3 学習セミナーの開催
知的好奇心の触発から基礎・基本の徹底まで
  夏休み期間中も子どものために教室を開放したり、希望者を対象とした学習セミナーや補充学習を実施する学校が増えてきている。
  B小学校では、夏休み中の12日間、図書室を学習室として開放している。当番の教師が一人つき、子どもたちは本を読んだり、ドリルに取り組んだりと、思い思いの学習をする。
  「学校としては子どもたちに場を提供するだけですが、その意味は大きいと思います。一人で家にいるとゲームで遊んでしまうような子どもが、友だちに会いたくて、学校に来て友だちと勉強する。学習室が居場所として機能しているわけです」
  夏休み期間中の5日間を使って、校内で「サマースクール」を開いているのはC小学校だ。図4のように、05年度も教科別、低・中・高学年別に計21の講座を開く予定だ。
▼図4
図4
  C小学校の取り組みがユニークなのは、保護者や地域の方にこだわって講師をお願いしていることだ。内容も、04年度は社会科は消費者教育、家庭科は食育といったように、教科の発展的学習を意識したものとなっている。子どもたちはこれらの講座の中から、自分の興味のあるテーマを選択する。04年度は約6割の子どもが参加したという。
  「知的な刺激を与えれば、子どもはどんどん伸びていくはずです。そこで夏休みを使って、普段の授業ではなかなか扱えない分野にふれさせたいと考えたのです。ただ、消費者教育や食育といったテーマを教師自身が教えるのは難しい。そのため、地域に住んでいて、ある分野について専門的な知識を持っている方に協力を依頼しました。外部講師にお願いするといっても、もちろん講座では、教師もサポートに入ります」
  一方、基礎・基本の習得を重視した学習セミナーを夏休み中に開催しているのが、D小学校だ。D小学校では04年度、夏休み中に低学年向け、中学年向け、高学年向けの三つの講座を、1日1時間8日間にわたって開催した。セミナーの内容は、本の読み聞かせや、教師が用意した算数や漢字のプリントに取り組ませるというもの。プリントの問題は、1学期の復習が中心だという。
  「学習セミナーを行うにあたって、パソコン教室や手芸教室といった子どもたちの知的好奇心を高めたり、視野を広げるための講座の開催も考えました。しかし、本校の子どもたちの状況を考えたときに、まずは国語と算数の基礎・基本をしっかりと身につけさせることの方が大切だと判断しました」
  夏休みの学習セミナーを補充学習的なものにするか、発展的な内容にするかについては、子どもの学習状況や保護者のニーズによって、各校ごとに異なってくるだろう。いずれにしても、夏休みを子どもたちに有意義に過ごしてもらうために、あるいは夏休み明けの立ち上げを円滑にするために、学校としてなんらかの手だてを講じるのは非常に意味のあることだといえる。
  学習セミナーを開く時期についても工夫ができる。夏休み明けの生活習慣の乱れを指摘する声が多いが、学習セミナーを夏休み後半に開くことで、子どもたちは朝起きて学校へ行くリズムをつくることができる。その結果、夏休み明けの学習にスムーズに移行することができ、子どもたちの集中力も高めることができるという効果を期待できる。
  保護者を通した子どもへの働きかけと、学校からの子どもへの直接的な働きかけ。夏休み中の指導は、この二つが大きな柱といえそうだ。


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