特集 「学校力」を生み出す学校評価
●座談会出席者
北神正行

▲岡山大教育学部教授

北神正行

Kitagami Masayuki
1955年生まれ。現在、岡山大教育学部、兵庫教育大大学院連合学校教育学研究科の教授を務める。専門は学校経営学、教育行政学。『教師の条件−授業と学校をつくる力』(共著・学文社)をはじめ著書多数。

小川 潔

▲岡山県岡山市立岡山中央小学校校長

小川 潔

Ogawa Kiyoshi
教職歴36年。同校の校長に赴任して2年目。学校教育目標は「愛・学び・喜び」。子どもとともに、大人も成長をしていけるような指導を心がけている。

岩堂秀明

▲岡山県岡山市立 石井中学校校長

岩堂秀明

Iwado Hideaki
教職歴33年。同校に赴任して3年目。石井中学校は岡山市の地域協働学校づくり事業の指定を受けている。小学校校長(幼稚園長兼務)の経験を大切にして系統的できめ細かな指導を心がけている。

※本文中のプロフィールはすべて取材時(06年3月)のものです
岡山県 岡山市立石井中学校

2004年度、生徒や保護者、地域住民、教師を対象とした学校評価の導入を契機に、校内環境が大きく改善。生徒に対する評価項目の1つ「学校の雰囲気はよく、落ち着いた学校生活を送っているか」に対する肯定的な回答は、04年6月には1割だったが、05年6月には8割にまで上昇した。年2回のPDCAサイクルを繰り返し、学期末の反省を次の学期に反映させるというスピーディーな学校改善を展開する。
校長◎岩堂秀明先生
生徒数◎437人
学級数◎14学級
URL hhttp://www.city-
okayama.ed.jp/~ishiic/

※岡山県岡山市立岡山中央小学校についてはP1参照
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【座談会】学校評価の効用を語る

学校評価は「学校力」の向上につながるか

今号の巻頭座談会で筑波大大学院の小島弘道教授は、「『学校力』の向上は、学校が今ある課題と向き合い、それを乗り越えていく中で形になっていく」と語っている。この座談会では、具体的に「学校力」とは何を指すのか、そして、学校力向上のために学校評価はどのように機能するのかについて、現場の目線から、具体的な事例を交えて話し合っていただいた。

学校の特色はいわば「結果」実践の積み重ねが個性を磨く

 ―最初に、学校の個性が求められる昨今の状況の中で、両校では学校の特色をどのように考えていますか。

小川 本校は少子化による統合で2005年度に新設したため、特色づくりはゼロから始まりました。しかし、当初から「こんな特色を打ち出そう」という考えは持ちませんでした。あらかじめつくった枠に教師や子どもをはめ込むのではなく、教師は自分の個性を発揮し、目の前の子どもの実態に合わせた働きかけをする。その過程で次第によいものが残り、特色になるのではないかと考えたのです。
岩堂 私も、学校の特色は奇抜さや目新しさではなく「結果論」だと思います。他校と違う点を取り立てて強調するより、当たり前の教育を当たり前に実践することが重要ではないでしょうか。しかし、この「当たり前」がなかなか難しい。子どもの実態、保護者や地域住民の声を常に把握しなければなりませんから。
  これらを確実に行うために本校が導入したのが学校評価であり、集めた声を反映させ、柔軟に軌道修正するための方法が、年2回のPDCAサイクルです。自動車に例えれば、フルモデルチェンジではなく、マイナーチェンジを重ねて、乗り心地を追求する感じですね。教育目標も実態に合わせて変え、05、06年度ともに目標を新たに策定しています。
北神 日々の教育活動の到達点を示す教育目標は、とても大切だと思います。しかし、いつつくられたのかも知らず「飾りもの」にしている学校は少なくありません。目標と実態が乖離しては、行動規範がないのも同然です。
  どういう学校をつくりたいか、あるいはつくってほしいか。それを教師や子ども、保護者、地域が一緒になって模索することで、将来への展望がひらけます。そのプロセスを通じて築かれる保護者や地域との関係は、学校の特色の形成にも不可欠だと思います。
小川 学校外部との関係をつなぐプロセスの重要性は、この1年間で実感しました。かつては5校あった学区から子どもが集まるため、初年度は地域の気持ちを一つにすることが最大のテーマでした。私自身、地域のさまざまな会合に出向き、「こんな学校にしたいと思います」と語りかけるうちに、次第に本校の気持ちが伝わっていくのを感じました。
写真

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