教育現場の挑戦 小学校からのキャリア教育
静岡県 沼津市立原東小学校

1981年に開校。2002年より上越教育大の三村隆男助教授の指導を受けながら、生活科や「総合的な学習の時間」を中心に、独自のキャリア教育に取り組んでいる。

工藤榮一

▲校長 工藤榮一先生

児童数 526人
学級数 17学級
所在地 〒410-0306
静岡県沼津市大塚814-1
TEL 055-967-1213
FAX 055-967-1214
URL http://www.numazu-
szo.ed.jp/harahigasi-e/

※本文中のプロフィールはすべて取材時(06年3月)のものです

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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[実践事例]

静岡県 沼津市立原東小学校

キャリア教育で、めざす児童像を明確にし、教師の意識も変える

実践のポイント
1 キャリア教育で目標とする具体的な子どもの姿を低・中・高学年ごとにまとめる
2 キャリア教育を「総合的な学習の時間」や生活科との関連表で、教師への理解を図る
3 教師用の「実践のためのテキスト」をつくり、実践を受けて毎年改善する

キャリア教育でさまざまな場面への対応力を伸ばす

 2002年度に赴任した工藤榮一校長は、児童と教師の様子を見て疑問に感じたことがあった。
  「子どもたちに元気がなかったのです。歌声には元気がなく、普段の生活でも明るさが感じられませんでした。教師も自信のなさそうな顔をしてばかり。そんな状態を改善して、元気で明るい学校にしたいと思ったのが、そもそもの始まりです」
  工藤校長がキャリア教育を導入した背景には、校長自身のある経験があった。工藤校長が中学の数学教師だったころ、勤務先の不登校の生徒のために、自分の趣味でもある園芸部をつくった。不登校の生徒のうち5人が入部。生徒と一緒に育てる作物を考え、サツマイモ、スイカなどの種植えから収穫までを行った。
  「園芸部の活動の中で、植物を育てるといった自分の役割を果たすことで、自分は頼りにされているのだという『自己有用感』を育むことができ、自分の未来を肯定的に捉えるようになったのだと思います。やがて、5人全員が登校できるようになりました」(工藤校長)
  働く中で自己有用感を得た経験を生かし、原東小学校でもキャリア教育によって児童や教師を元気にできると工藤校長は考えた。
  つまり、原東小学校が行うキャリア教育は、進学先・就職先を具体的に考えることではない。「キャリア教育」を勤労観、職業観を含む「さまざまな役割を担う場面で対応する力を伸ばす教育」と捉え、「家庭と社会をつなぐもの」と位置づけている。小学校段階でいえば、遊びの中での役割、家の手伝い、課外活動、清掃活動などを通して自分の役割を果たすことで、自己存在感、自己有用感を高めることができる。

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