特集 量から質へ―これからの学びを考える

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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学年と共に型を外し自主性を引き出していく

  しつけはどのように行われているのだろう。
  例えば「聞くこと」では、低学年では「発表する人の方を向く」「聞き取れなければ『もう一度言ってください』などと言う」「発表後には『同じです』『付け加えます』などと声に出す」といったルールがある(図1)。初めはこれらを機械的に守らせることで、「皆が自分の方を向くと発表しやすい」「発表後に声に出して賛同してもらえると安心する」といったよさを体験的に理解させるのだ。
  低学年への指導では「褒めること」が指導のポイント、と中村校長は強調する。
  「特に1年生は、褒められると非常に喜びます。できない子どもを叱るのではなく、『Aさんは上手だね』というようにできている子どもを褒める。すると、自分も褒められたいと思い、真似をするようになります」
図1
  型を守らせる指導は、中学年に入ると徐々に緩められていく。逆に、「理解できるときはうなずく」「発表者に態度で表現する」など、自分なりに表現することを促していく。
  「個人差はあるものの、平均的に3、4年生から自主性が芽生え、自分なりの表現を始めます。ただし、学級の雰囲気や担任の力量によっては、高学年でも形式を踏まえないと機能しないクラスもありますから、学年段階だけで判断しないようにしています」(中村校長)
  高学年では「客観的事実なのか、個人の意見なのかを考えながら聞く」といった、より高度な指導を行う。このころには基本的な学習態度は習慣化されており、特別な指導は必要ない。その代わり、身についた学習態度を活用し、児童の自主性を引き出す指導に重点を移す。教務主任の田邉源裕先生が語る。
  「例えば、だれかの発言のあとには、『ほかに違う考えはありませんか』など、必ずほかの児童の意見を求める状況をつくる。それを繰り返すと、教師が指す前に、自主的に意見が出るようになります。授業の進行や板書、発問の工夫で、意図的に聞かざるをえない、考えざるをえないという状況をつくり、児童の自主性を伸ばしていくのです」
  最近は、自分の意見や気持ちを相手に伝わるように表現できない若者の増加が指摘されている。田上小学校のしつけには、人間形成の土台がつくられる小学校のときこそ、自ら学び、行動し、表現できる子どもを育てなくてはならないという理念がある。

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