みんなで取り組む小学校英語

【東京都 足立区教育委員会】

東京都の北東に位置し、人口約65万人。小中学校の基礎学力の向上に力を入れ、成果を上げつつある。2005年度から、国の構造改革特区の指定を受け、06年度より小中一貫の「興本扇(おきもとおうぎ)学園」を開校させた。


学校数●小学校72校

所在地●〒120-8510 東京都足立区中央本町1-17-1

TEL●03-3880-5111(代表)

URL●http://www.city.adachi.tokyo.jp
/024/d09800001.html


●英語活動実施状況

実施率●区内小学校(72校)のうち、06年度の英語活動実施率は約7割

時数●年間4〜11時間が大半。35時間以上は5〜6校(06年度)

ALT派遣●06年度は24校に派遣。07年度は46校派遣予定


伊藤俊典

▲足立区教育委員会
教育指導室長

伊藤俊典
Ito Shunsuke
西貝裕武

▲足立区教育委員会教育指導室
指導主事

西貝裕武

Nishigai Hiromu

*本文中のプロフィールはすべて取材時(07年3月)のものです
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
   PAGE 10/23 前ページ 次ページ

【事例1】自治体の教員研修

外部講師を活用した研修で
教師の不安を安心に変える

東京都 足立区教育委員会

多くの教師たちには、英語の指導には「完璧な英語」が必要といった思い込みがある。そこに起因する英語活動への不安や抵抗感を取り払うため、足立区教育委員会は、教師の意識改革を促す教員研修に着手した。

「完璧な英語は必要ない」という意識を浸透させる

  足立区では、2006年度、区立小学校72校のうち約7割が英語活動を実施。年間4〜11時間という学校が多く、35時間以上の学校は5〜6校だった。小学校英語の実施率が全国平均より低いという現状と、今後、英語活動を行う学校が増えるという予測から、同区は06年度から「小学校英語活動研修会」を始めた。伊藤俊典教育指導室長は、研修では「教師の意識改革」を重視したと話す。
  「文法や語法の説明と訳読中心の英語教育を受けてきた教師は、英語というと『完璧な英語』でなければならないというイメージが強く、自分にはできないと決めつけたり、意味を伝えるより正確な英語を話すことを重視する傾向がありました。しかし、小学校の英語活動で求められるのはコミュニケーション活動です。コミュニケーション活動では、意味の伝達を重視することが何よりも大切です。そこで、文の形式のみに焦点を合わせた活動だけではなく、目的を持った情報の相互伝達活動を通して、英語に触れさせることが重要だと認識してもらうことが大切と考えました」
  初年度となる06年度の研修は、外部から講師を招いて全5回実施。各回約50人が参加した。研修は、第1回で小学校英語の位置づけや目的を確認し、土台となる考え方を共有。第2〜4回で学級担任主導で無理なく行える具体的な授業の進め方を学んだ。第5回は、実践事例を交え、英語を通して子どもが身につけていくべき力について考えた(図1)。 

図1
写真1
写真1 第5回の研修の様子。グループワークと発表を繰り返し、20年後、30年後を想像しながら、子どもたちにつけたい力について考えた

  研修の狙いを達成するため、講師は慎重に選んだと、同区の英語教育を推進する西貝裕武指導主事は話す。「学級担任が簡単な英語を堂々と使うことによって、短い英語でもメッセージをやりとりできることを子どもに伝えられます。学級担任には子どもにとってのよき英語学習者のモデルとなってほしい。『This is my English』という気持ちで担任と子どもが交流すれば、英語活動は笑顔溢れる魅力的な時間になる」という区の意向に沿う英語の指導者や研究者ら3人に依頼。矛盾が生じないよう、事前に入念な打ち合わせをした。
  「スキルが大事だと言われると、スキルに自信のない教師は指導をためらいがちです。教師を勇気づけ、背中を押すような話をしてくれる方を選びました。また、小学校の英語活動では具体的な到達目標や指導法に関する指針が明確ではないため、講師が複数になると話の観点もずれやすく、教師は混乱してしまいます。単に有名な講師を呼んだだけではうまくいきません。どの人も同じスタンスで話してもらえるよう、こちらの意向は十分に伝えました」(西貝指導主事)
  アンケート結果からも「自分なりの英語でよいという話を聞け、とてもほっとした。楽しみながら指導できそうです」といった声がたくさん集まり、研修を通して、教師の意識が変化したことがうかがえる。
  「コミュニケーションの意欲や態度の育成という目標が認識できると、気持ちの上で楽になるようです。具体的な授業を例示すると、自分にもできると見通しも立つのでしょう。『こんな英語の授業は受けたことがない』と、教師自身が楽しそうでした」(西貝指導主事)


   PAGE 10/23 前ページ 次ページ
目次へもどる
小学校向けトップへ