教師がつながる「授業研究」
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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育てたい子ども像から始まる日本の研修

 授業研究について深く知りたいと思い、授業を百回以上見学するうちに、日米間の学校文化の違いがよくわかってきました。
  アメリカでも、教師の資質や授業力向上のための研修には相応の時間をかけています。しかし、日本の学習指導要領のような全国共通のカリキュラムがないので、話し合いの多くは、カリキュラムの開発や教科書の選定、教材の検討などに費やされます(図1)。共同で指導案を練ったり、互いの授業を見たりすることはほとんどありません。教師歴数十年のベテランでも、同僚に一度も授業を見られたことのない教師は大勢います。その背景の1つには、アメリカでは子どものテスト結果が教師の評価を大きく左右するため、教師同士の競争意識が強いことがあると思います。授業を見るどころか、自分の悩みを同僚に相談することさえ避けられているのです。
  日本には学習指導要領があり、教科書が充実していることもあって、教師同士で指導案や授業の構成、指導技術に関する話し合いに力を入れる文化が根付いています。それを知ったアメリカ人の教育関係者は一様に驚き、研修の中身を見直すきっかけになりました。
  日本の研修のもう1つの特徴は、「どのような子どもを育てたいか」といった問いから始まることです。これは、「人間関係を大事にする」「挨拶がきちんとできる」といった、子どもの社会性や人格形成を目指す「全人教育」を最終目標として意識していることの表れです。こうした視点も、従来のアメリカの研修にはありませんでした。日本の研修は、知的発達と社会性の育成を両立しているという点で世界でもトップレベルといえるのです。
図1

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