教育現場の挑戦 「できるところから」を合言葉に年々広がる小中5校の教科連携

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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「つなぎの問題」で算数・数学の段差を解消

 ジョイント5を牽引(けんいん)するのは、各校の教務主任で組織される「ジョイント5常任推進委員会」だ。毎月1回の委員会で具体的な内容を決め、それを自校の教師に伝える。
  活動は5つの柱からなる(図1)。中でも力を注ぐのは、「授業づくり」だ。これは、03年度から2年間、5校が文部科学省の学力向上フロンティアスクールに指定されたのを機に、算数・数学は亦楽小学校・七ヶ浜中学校、英語は汐見小学校・松ヶ浜小学校・向洋中学校と分担し、それぞれで研究をすることにした。

図1

  算数・数学の研究では、まず小中の教師による意見交換を行った。「小中の間に立ちはだかっていた壁を壊すため」と、亦楽小学校教務主任の徳田修先生は理由を話す。
  「小学校の教師は『算数が得意だった子どもが中学校に入ると数学を嫌いになってしまう』、中学校の教師は『小学校ではこんなことも教えていないのか』と、互いに不満がありました。まずは、意見をぶつけ合うことから相互理解を始めようとしました」
  話し合いが進むにつれ、教え方や学習内容に小中で大きなギャップがあることがわかった。算数では単元別に理解すればよいが、数学になると単元内容を組み合わせて使うために混乱する子どもが多い、算数では手薄となる範囲が数学では重要であること、などだ。
  そうした状況をカバーするために、04年度から七ヶ浜中学校では、年間6時間、中1の数学に算数を復習する時間を設けた。また、亦楽小学校では、小中の教師で作成した「つなぎの問題」(図2)を活用し、算数から数学への移行がスムーズになるよう工夫している。
  例えば、算数の「比」には分数が出てこないが、数学では当たり前のように出てくる。比や分数をそれぞれ理解していても、同時に応用できない子どもが多い。そうした問題を集め、既習事項を生かしながら子どもが挑戦する。

図2

  毎年2月、亦楽小学校の6年生がつなぎの問題に取り組むときには、七ヶ浜中学校で選択数学を履修する2年生が小学生の学習を支援する(写真1)。七ヶ浜中学校教務主任の佐藤剛先生は、その意義を話す。
  「勉強にあまり熱心でない生徒でも、『小学生の前で恥をかきたくない』と予習してきます。また、人に教えるということで、リーダーとしての資質を育むことにもなります」
  両校の教師が互いに行き来し、チームティーチングとして算数・数学の授業に参加するのも、子どもの数学への移行を手助けするのが狙いだ。特に中1の「比例・反比例」でつまずく生徒が多いことから、亦楽小学校の教師は中1の比例・反比例の授業で小学校の既習内容を支援する。一方、七ヶ浜中学校の数学教師は、小6の「比例」で数学の比例・反比例や一次関数とのつながりを考慮しながら指導する。

写真1
写真1 「つなぎの問題」に取り組む小6生を中2生が支援する。児童には、すぐに解法を教えるのではなく、ヒントを提示するなど、教え方も工夫している。小6生が抱く中学校への不安を軽減させると共に、教える側の中2生にもリーダーの育成などの効果がある

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