新学習指導要領へのアプローチ 第1回 「言語活動」で広がる学び
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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「なぜ」「どうして」を繰り返すフィンランドの授業

 私たちがどのような授業をしているのかを、具体的に紹介しましょう。おとぎ話を題材にした小学校低学年向けの授業を例に挙げます。
  私たちはいきなり本文を読み始めるということはしません。タイトルと表紙の挿絵を子どもに見せ、日本語の「むかし、むかし……」に相当するフレーズまで読んだところでいったん授業を止めます。そして、「さあ、これから始まる物語は本当のことかな? それともおとぎ話かな?」と子どもに問いかけます。
  多くの子どもは、すぐに「おとぎ話だ」と気がつきますが、肝心なのは子どもがなぜそう考えたのかを問うことです。「いろいろなお話を聞いたことがあるけれど、おとぎ話は『むかし、むかし……』で始まったよ」と答える子どもがいれば、経験を基にした推論ができているということになります。
  更に話を読み進め、登場人物が店に入るシーンが出てきたとします。ここでも本文の読解に入る前に、「みんなは、どんな店に、いつ、だれと、どうやって、何をしに行ったことがあるかな?」と、いったん子どもの生活体験を問う作業を入れます。こうした作業を一度入れることで、その後、本文の読解を進める際に、「ここまではこういう話だった。自分の経験に照らすと、だいたいこういうときはこうなった。だからこの物語もこうなるのではないか」という具合に、本文の内容と自分の体験とを結び付けて推論できます。
  もちろん、物語の続きは常に予想通りに進むとは限らないですし、ときとしてあまりにも現実離れしたストーリーを予想する子どももいます。そうしたときにも「なぜそんなことを言うの!」と叱るのではなく「どうしてそうなると考えたの?」と問いかけます。
  また、日本ではあまり行われていないそうですが、教科書の挿絵を使った活動もよく行います。挿絵は単なる「飾り」ではなく、「読む」ためのものです。子どもに絵から読み取れたことを列記させていくこともありますし、絵を基に非常に長い物語を考えさせ、ドラマを演じさせることもあります。それが難しい子どもがいたら、「私にはしっぽがあります、耳が長いです」など、挿絵に描かれたキャラクターの特徴を言わせて、クラスのみんなに、その子がなりきっている登場人物を当てさせる、といった活動をすることもあります。このように、教科書からでも、推論する力を育てる手立てはいくらでも見つかるはずです。

写真

フィンランドでは、教科書の挿絵を「読み取る」活動も頻繁に行う。例えば、写真のような挿絵を見ながら、登場する動物の特徴を表現させ、友だちに何の動物かを推論させる活動などがある


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