「データで考える子どもの世界」
新学習指導要領へのアプローチ 第2回 学びが深まる「算数的活動」



広島県廿日市市立平良小学校

広島県廿日市市立平良小学校

School Data
2003年度から文部科学省「学力向上フロンティア事業」(2年間)の指定を受け、国語科と算数科の学力向上に取り組む。05年度からは「人権教育総合推進地域事業」(3年間)の指定を受け、算数科を中心に問題解決型の学習の充実に取り組んでいる。校舎は瀬戸内海を一望できる高台にあり、教室は壁を取り払ったオープンスペースになっている。

 

校長◎岡本美紀子先生
児童数◎708名 
学級数◎23学級(うち特別支援学級2)
所在地◎ 〒738-0060 広島県廿日市市陽光台1-4-1
TEL◎0829-38-0251
URL◎http://ww4.
enjoy.ne.jp/~herasho/


戸崎志乃婦

廿日市市立平良小学校

戸崎志乃婦

Tosaki Shinobu

教務主任。6学年担任

福田陽子

廿日市市立平良小学校

福田陽子

Fukuda Yoko

研究主任。少人数指導担当
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【学校事例】 算数的な考え方の育成

スパイラルを重視した「パフォーマンス課題」で
算数的な考え方を伸ばす

広島県廿日市(はつかいち)市立平良(へら)小学校

平良小学校は、単元の始まりと終わりに「パフォーマンス課題」という独自の文章題を課して
子どもの到達度を測り、反復(以下、スパイラル)を意識した学習を行っている。
算数の知識と毎日の生活との関連を実感させながら、知識の習得と活用を図っている。

「パフォーマンス課題」で子どもの学習到達度を測る

図1

 まず図1の文章題を見てほしい。これは、平良小学校の4年生が算数の「式と計算」を終了したあとに取り組んだ問題だ。この単元では、「ある具体的な場面を、四則の混合した式や( )を用いた式に表すことができ、その式を正しく計算できるようになること」が目標である。図1の文章題は、子どもの学力の到達度を測るために、同校の教師が独自に作成したものだ。研究主任の福田陽子先生は、この問題の意図を次のように話す。
 「カレーパーティーでの材料費を問題にしたのは、子どもの生活に身近な話題だからです。算数の学習が、授業の中だけで終わるのではなく、自分の生活につながっていることを実感してほしいと思い、このような問題にしました。問題のレベルは、四則計算の順序や( )を用いた式をきちんと理解できていなければ解けないものにしています。つまり、この問題が解けたなら、単元の目標に子どもの学力が到達していると判断できるわけです」
 この文章題のように、同校の算数科では、単元の終了後に子どもの学習到達度を測る課題を設定している。しかも、その課題は「全国学力・学習状況調査」のB問題(活用)の考え方に近い、「習ったことを活用して表現する問題」としている。これを同校では、「パフォーマンス課題」と呼ぶ。パフォーマンス課題を詳しく定義すると、次のようになる。
 「児童が実際に特定の活動を行い、学力が表現されているかどうかを評価するもの。問題の思考過程がわかるように、理由や根拠になる図や式を示して説明させる」
 答えに至る過程が一つではない、こうした問題に取り組ませると、子どもは十人十色といってもよいほど、さまざまな式や図を使って表現する。この種の問題は、子どもの「算数的な考え方」の成果を測る上では有効だが、多様な答えから一人ひとりの子どもの学習到達度を分析するのはなかなか難しい。
 そこで同校では、「ルーブリック(注1)」という評価基準を作成している。評価基準は3段階に分かれ、判断の参考にするために各段階の子どものパフォーマンス事例も添付されている(図2)。教師はこれを基に、子どもの多様な答えの到達度を判断する。教務主任の戸崎志乃婦先生は、ルーブリックは指導案づくりの指針になると話す。
 「本校では、すべての子どもをパフォーマンス課題のU基準以上に到達させることを目標にしています。単元に入る前にゴールを決め、そこに至るまでにはどのような授業や個に応じた指導が有効なのかを考えながら計画を練っています。ゴールから逆向きに考えて単元づくりをするのが、本校の特徴です」

注1) rubric。絶対評価のための判断基準表のこと。
図2

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