つながる学校と家庭の学び
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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目の前の子どもを通じて学校と家庭が連携する

 学校と家庭が連携をするのは、あくまでも子どものためです。だからこそ、大切なことは想像力を働かせて目の前にいる子どもを見ることです。「どんな気分で朝を迎え、学校に登校し、帰宅後は何をしているのか」と学校外での姿も含め、子どもの1日を想像する。クラスにいる30名の子どもそれぞれの家庭生活を感じてみるのです。ちょっとした瞬間に一人ひとりの子どもに目を配り、いつもと違う様子を感じたら「どうしたの」と声をかける。「何でもない」と言うかもしれないし、「今日、お母さんの元気がなかった」と答えるかもしれません。常にアンテナを張り、子どもの変化を見逃さないようにすることで、子どもを通じて家庭とのつながりができてくるのです。
 目の前の子どもに想像力を働かせ、何を欲しているかに思いを巡らせる。そして、子どもが学校にいる間、少しずつ働きかけながら元気にしていけば、子どもは元気を家庭に持ち帰り、家庭も少し元気を取り戻す。それが、連携の根本にあるものです。「今日、学校で友だちや先生と遊んで、すごく面白かった」と子どもが保護者に伝えれば、「いい先生だね」と保護者は言うでしょう。すると翌日、子どもは先生に「お母さんがいい先生だって言っていた」と伝えにくるかもしれません。このように、日々のやりとりの中でよい循環を生み出すこと。よい循環が生まれないなら、障害をどうすれば取り除けるかと考えること。それが、学校と家庭との連携の第一歩なのです。
 新しい取り組みを立ち上げなくても、多くの学校が行う保護者会を有効に活用することで、直接立ち入ることが難しい事柄にも働きかけることができます。保護者会を夫婦関係や子どもとの関係を考えるための機会として捉え直すのです。
 例えば、夫婦関係や親子関係を見直すため、保護者同士でロールプレイング(注1)をしてもらいます。父親役が疲れて自宅に帰ってくる。そこに母親役が「あなた、聞いて!今日、うちの子が友だちとけんかしたのよ」といきなり話し始める。すると、父親役を演じたお母さんは、「疲れて帰ってきたところに、いきなりワーッと話されると、やめてほしいという気持ちになる」ことでしょう。相手の立場を演じてみて、「私も相手に嫌な思いをさせている」と気付いてもらうのです。気付いたことを家に持ち帰り、夫との関係に生かせば、「いつも口げんかをしているのに、今日のお父さんとお母さんはいい感じだ」と子どもは敏感に察知するでしょう。保護者会の場で家庭内の空気を変えるきっかけづくりをして、家庭や子どもを援助するわけです。

注1)カウンセリング学習・心理療法などにおいて、ある役割を積極的に演じること

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