新学習指導要領へのアプローチ 第4回 「活用」から考える授業づくり

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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Q8:「活用」の指導で陥りやすい失敗を教えてください

A8:(1)習得で終わる、(2)子どもが実は考えていない、(3)全員が思考しているとは限らない、というケースがあります
 それぞれもう少し詳しく説明します。
 一つめは、習得で終わってしまい、「活用」に発展しない授業です。例えば、平行四辺形の面積を求める公式を覚えさせ、ドリルの問題を解かせるだけなら「習得」です。これでは単なる暗記にとどまり、なぜ長方形と同じく「辺×辺」ではいけないのかという本質は理解できません。この状態であれば、少し複雑な文章題で平行四辺形の面積を問われ、二つの辺と高さが与えられている場合、「辺×辺」で計算する子どももいるでしょう。「活用力」を伸ばす指導では、さまざまな高さの平行四辺形を見せて長方形との違いを視覚的に学ばせるなど、十分に思考させる必要があります。
 二つめは、子どもが考えているようで、実際は考えていない場合です。教師が「考えなさい」と指示し、子どもが「うーん」とうなっているからといって、必ずしも考えているとは限りません。何もない状態で「考えろ」と言われたら、大人でも困ってしまいます。考えるヒントや方向性を与えられて初めて、子どもの思考は動き始めます。それが繰り返し述べている、「思考の焦点化」です。
 三つめは、1人の子どもが答えを出したら、次に進んでしまうケースです。子どもによって思考の深さや速さが異なるのはいうまでもありません。だれかが答えに到達した時点で考えるのをやめさせたら、大部分の子どもは思考が不十分なままで終わってしまいます。「活用」の指導で重要なのは、答えよりも、そこに至るまでの思考です。皆が思考の過程を説明できるようになるまで、時間をかけて考えさせましょう。

Q9:子どもに「活用力」が付いたかどうかどのように確かめればよいでしょうか

A9:クラス単位で記述式の評価課題を実施することがお勧めです
 文部科学省の「全国学力・学習状況調査」のB問題では「活用力」の一部が問われているので、ある程度は参考になります。しかし、「活用力」を問う問題は基本的に自由記述式です。採点に手間がかかり、また採点者によって採点基準が異なることがあります。「全国学力・学習状況調査」のような大規模なテストでは、客観的に「活用力」を測るのは難しく、出題は最小限にとどめられています。
 一方、クラス単位であれば、自由記述のテストも十分に可能ですから、是非、積極的に取り入れてください。選択式の問題の正答率は高いのに、自由記述式がまるで答えられない子どもがいるなど、「活用力」の定着の度合いがわかるでしょう。
 また、従来のテストでは答案を返却して終わることが多かったのですが、「活用力」を育てるには、できる限り、答案を基に再指導することも大切です。
※「活用力」の評価方法については【インタビュー2】参照

Q10:2009年度からの移行措置の開始まであと少しです。どのような準備をすべきでしょうか

A10:指導法を検討し、校内研究の計画を立てましょう
 まず、2008年度中に、年間計画に基づき、各学年での「活用」に関する指導法について、具体的に検討する必要があるでしょう。これは少しでも早く始めるに越したことはありません。
 「活用」に関する指導法は、先生同士で伝え合い、高めていくことが必要なので、これまで以上に校内研究が重要になります。しかし、新しい学習指導要領下では授業時数が増加しますから、事前に計画をしておかなければ、校内研究の時間を取れないおそれがあります。各校で校内研究に関して年度内に課題を明確にして、年間計画の中に盛り込む必要があるでしょう。


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