低学年からの学びと指導 楽しい運動で体づくり
中村和彦

山梨大教育人間科学部

中村和彦

なかむら・かずひこ


山梨大教育学部卒業、筑波大大学院体育科研究科修了。専門は発育発達学、運動発達学、健康教育学。文部科学省、(財)日本体育協会、(財)日本オリンピック委員会、(財)日本レクリエーション協会等において、子どもの運動発達、体力向上に関する各種委員を務める。主な著書に『子どものからだが危ない!〜今日からできるからだづくり〜』(日本標準)ほか。

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【インタビュー】

山梨大教育人間科学部准教授 中村和彦

「体つくり運動」で
楽しみながら体の土台づくりを

〈体力・運動能力低下の背景〉
運動量の減少、食生活の変化、 生活習慣の乱れ

 前ページからもわかるように、日本の子どもの体力・運動能力の低下は深刻な状況です。例えば、今の子どもが大人になったとき、通勤電車で30分以上吊り革につかまって立っていることができなくなるだろうと、私はみています。子どもの体力の低下が、日本の社会を支える力の低下をもたらすとまでいわれるほどです。
 なぜ、このようなことになったのでしょうか。
 第一の理由に、運動量の減少が挙げられます。20年ほど前までは、放課後に子どもが大勢で外遊びをする光景が普通に見られました。子どもは、鬼ごっこ、缶蹴り、縄跳び、野球など、さまざまな外遊びを通して、運動能力や体力、体の動きをコントロールする能力を身に付けていました。大勢で遊ぶことによって、情緒や社会性、知恵なども育むことができました。しかし、今では、子どもが集団で外遊びをする姿をほとんど見かけません。
 第二に、食生活の変化です。米と魚や肉類、海藻類や豆類、野菜のおかずといったバランスのよい日本的な食事から、西欧型の肉類、乳製品、油を多く使った食事へと変わっていきました。家族みんながそろって食事をとるのではなく、弁当やファストフードを買ってきて、それぞれ好きなものを家族がばらばらに食べる「個食」も増えています。
 第三に、生活習慣の乱れが深刻です。子どもは、テレビやゲーム漬けになっていたり、夜型の生活に傾いたりしています。これらは睡眠不足につながるだけでなく、生活のリズムを狂わせ、成長ホルモンの分泌を悪くしたり、集中力を低下させ疲れやすくしたりといった現象も引き起こしています。
 今の大人は子ども時代に「よく遊び、よく食べ、よく寝る」といったきちんとした育ちの時期を過ごしてきました。つまり、体の土台をしっかりつくることができていたのです。ですから、今はファストフードを食べ、夜型生活でも大丈夫なのです。
 しかし、今の子どもは体づくりの土台となる育ちの時期そのものが崩れています。このままでは、成長しても今の大人と同じような体にはなれないのです。


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