低学年からの学びと指導 楽しい運動で体づくり
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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〈体つくり運動の指導案〉
体を動かす楽しさを遊びの中で感じさせる

 体つくり運動でお薦めの指導例を紹介します(図4)。もちろん、これ以外にも先生ご自身の子どものころを思い出し、いろいろな運動遊びを組み立ててみてください。
 体つくり運動はさまざまな動きを子どもに身に付けさせることを目的としていますが、最も大切なのは「体を動かすのは楽しい、面白い」と子どもに感じさせることです。ですから、低学年では遊びの要素をふんだんに取り入れるのがポイントです。そのためには、次のような観点を取り入れるとよいでしょう。
  一つは、子ども自身が工夫したり、自発的に考えたりするようにしておくことです。例えば「ものを遠くに投げる」といった運動を身に付けさせたいとしたら、「遠くに投げるための最適なフォーム」を一から教えるのではなく、「ボールをあの的(標的)に向けて投げてみよう」と、動きを身に付けるための場をつくり、子どもが「頑張って的に当てたい」「どうすればうまくいくだろう」と自発的に工夫して取り組めるような授業計画を立てるのです。
 図4で紹介した「しっぽとり」でも、同様です。列の先頭の守り役が鬼を後ろに行かせない役割をしますが、列につながっている子どもにも、どうすれば素早く動けるのか、鬼に守りを突破されたときにどのような防御策を講じるとよいのかと考える場面がたくさんあります。
 二つめは、ルールを子どもに合わせて変えることです。バレーボールなどもルールを変えれば、低学年からでも楽しむことができます。「このスポーツはこうすべきもの」といった既存の枠組みにとらわれず、子どもの発達段階に応じて楽しめるものに変えればよいのです。
 より面白く運動するために、ルールを変えてもよいでしょう。その際、「どうすればもっと面白くなるかな」「みんなが面白く思えるようなもっとよいルールはないかな」と子どもに考えさせ、自分たちで決めさせることです。子どもは自発的に「こうしてみよう」と考え、運動の楽しさをより感じることができます。また、工夫の余地を残すことは、仲間とのコミュニケーション能力を培うことにもつながります。子どもが面白いと思える工夫をしていくことによって、休み時間などでも「あれ、やってみよう」となっていったらよいですね。

 図4 
指導案1
しっぽとり

6人中、1人が鬼(オフェンス)となり、5人は前の人の腰を持ち、1列になる。列の先頭の人が主に守り(ディフェンス)。

鬼は列の一番後ろの人にタッチすれば勝ち。守り役は、両手を広げ、列の一番後ろの人に触れられないように守り、列はそれについていく。列の腰を持つ手が離れてしまっても鬼の勝ち。

写真

ポイント


列を構成する人数を増やしたり、少なくしたりするだけでも、難易度や面白さが変わる。

指導案2
プレルボール

3〜4人くらいのチームを2つつくり、バレーボールのコートに入る。

相手から来たボールをワンバウンドさせ、ボールを打ち返す。バレーボールのようにボールを敵陣に落として2バウンド以上させると、点数が入る。

写真

ポイント


●コートの中のどの子どももボールに触るように、コートの中で1人ずつ守備範囲が持てるくらいの人数にする。「3回で相手コートに返す」のではなく、「全員が1度は触った上で返す」など、ルールを変更してもよい。
●ネットなしで、コートの中央にラインを引くだけでよい。中学年以降は、ネットを低めに張ると難易度が高まる。

指導案3
赤と白

クラスで2人1組をつくる。また、1人、号令を出す係を決める。2人組のどちらかを「赤」、もう1人を「白」と決めておく。

2人は向かい合い、互いに手を伸ばして指先が触れ合うくらいの距離で離れる。

号令係が「赤」と言ったら赤の人が逃げ、白の人が追い掛ける。「白」と言ったら逃げる側と追う側が逆転する。

逃げる側が3秒以内につかまったら、追い掛ける側の勝ち。つかまらなかったら、逃げる側の勝ち。

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ポイント


「赤!」などの号令に、「青!」などとダミーを交えることで、難易度が上がる。チーム分けを赤白の代わりに「奇数」「偶数」などとし、号令を「3+4」など複雑にすると、より面白くなる(3+4=7なので「奇数」の人が逃げる)。

「体つくり運動」のワンポイントアドバイス
ルールの変更を子どもに任せ、より面白くなるように考えさせる。ただし、鬼が負け続けたり、チーム編成が偏りすぎたりしないよう、必要に応じて教師がルールを調整する

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