移行措置対応のポイント 第2回 「活用」から見る算数の授業
山梨県大月市立大月東小学校

山梨県大月市立大月東小学校

◎大月市の中心部に位置する、1873(明治6)年開校の伝統校。研究主題は、「主体的に学び、生き生きと活動する子どもの育成」。算数を始めとした各教科で、子ども同士がかかわり合いながら学びを深める授業の実践を目指して研究に取り組む。

校長◎鈴木英夫先生
児童数◎292人 学級数◎14学級(うち特別支援学級3)
所在地◎〒401-0013 山梨県大月市大月2-7-43
TEL◎0554-22-1102
URL◎http://www.otsuki
-higashi-e.ed.jp/

公開研究会◎2009年度は予定なし

鈴木英夫

▲大月市立大月東小学校校長

鈴木英夫

Suzuki Hideo

佐藤拓

▲大月市立大月東小学校

佐藤拓

Sato Taku
5学年担任

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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提案〈実践編〉誌上授業研究

「予想してから検証」の展開が
子どもの意欲を引き出す

山梨県大月市立大月東小学校 佐藤拓教諭
山梨大教育人間科学部 中村享史(たかし)教授

「活用」がなければ、算数の授業は成立しない―大月市立大月東小学校の佐藤拓先生は、そのような考えに基づいて問題解決型の授業に取り組む。
子どもの思考を促し、「活用」させる指導の流れを、「提案〈理論編〉」に登場の山梨大の中村享史先生による解説を交えて紹介する。
授業概要
若手の先生による活用の視点を含んだ授業へのチャレンジ
教科書を基に教材を工夫し、数直線を活用した授業

解説のポイント
子どもの考えをしっかり引き出すにはどのようにすれば良いのか?
授業時間が 長くならないようにするには、 どのようにすれば良いのか?

教科書は授業の流れのモデルととらえ、展開や素材を工夫

 「算数は、複数の知識や見方、考え方の関係性を考えながら思考を深めていく教科です。例えば、小数の学習では、整数に関する既習内容を広げながら理解していきます。こうした過程こそ、算数における活用ととらえています」
 大月東小学校5年生担任の佐藤拓先生はそう語る。活用は決して特別なものではなく、むしろ算数の学習には不可欠の要素ととらえているのだ。これは、「新しい概念を獲得する際には、既習の知識や見方、考え方が必ず活用されている」(佐藤先生)という考えに基づく。
 佐藤先生は、活用を重視した授業は教科書で十分に行えると考える。ただ、教科書はあくまでも「授業の流れについての一つのモデル」。展開や素材の扱い方を工夫する際には、子どものどのような考え方を育てるために書かれているかを読み取り、授業に生かす、という視点を重視する。
 活用を促すため、授業は「予想してから検証」という問題解決型の展開が多い。「確かめてみたい」「どうすれば分かるのだろう」といった気持ちを起こさせ、問題意識を高めるためだ。
 検証の過程では、自分の考えと友だちの考えを比較しながら、子どもが皆でより良いものを考えていくことを大切にする。例えば、「○○さんの意見をどう思いますか」「違う方法を考えた人はいますか」と、子どもの考えをつなぐ問い掛けを多用する。「先生に教えられている」のではなく、「友だちと一緒に考えている」という気持ちにさせるのがねらいだ。
 鈴木英夫校長も、共同的な学びの大切さを次のように説明する。
 「自分の考えが、時には修正されながらも、皆に受け入れられるという体験の意義は非常に大きい。自信や学びの意欲を育むなど、多くの点で有益です」
 子どもの考えを板書する際は、発表者の名前を書き添える。皆の考えが積み重なって授業が進むことを実感させ、誰の考えに影響を受け、自分の考えが最後にどう変わっていったのかを振り返らせるのが目的だ。授業の最後に必ず書かせる「学習感想」では、「○○さんの説明で○○について分かった」と、友だちの考えに触れる子どもが多い。子どもの発表に価値付けをして、「自分の考えが認められた」という有用感を与える効果も大きい。
 佐藤先生が活用を重視した授業を通して育てたいのは、「一見分からないような問題も、既習の内容を基に考えていけば解決できる」という意識を持つ子どもだ。
 「新しい問題に出合った時、疑問を持ち、根拠を明らかにしながら疑問を解き明かしていく子どもを育てたい。自分一人で分からなければ、友だちと一緒に考えれば良いということも、授業を通して伝えたいです」(佐藤先生)


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