移行措置対応のポイント 第2回 「活用」から見る算数の授業
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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子どもの考えを引き出し学び合いの授業をつくる

 佐藤先生が授業の「要」と考えていた、2.4の意味を深く考えさせる場面では、子どもの反応はおおむね予想通りだった。
「わり算の筆算は既習事項ですから、12÷5の式から答えを出すまでは順調でしたが、2・4の意味を数直線で表す場面で、ほとんどの子どもは戸惑いを感じていました。この迷いを出発点に、みんなで考えて答えを導き出す過程を通して、理解が深まったと考えています」(佐藤先生)
 数直線の作成自体は、整数の学習の頃から続けているため、戸惑う場面はなかった。だが、2倍から3倍の間を10等分するという新たな発想を引き出すことに予想以上の時間を要し、結果的に授業時間が延びたことに課題があるという。
 鈴木校長は「子どもたちの学び合いが成立していた」と、授業を評価する。
 「全員から考えを聞こうとする問い掛けや、黒板に名前を書く工夫により、子どもは自分だけで考えず、皆で一緒に考えようとする態度で授業に臨んでいました。こうした授業の積み重ねが子どもに自信を付けさせると共に、学ぶことの良さや楽しさを感じさせて、他の教科にも良い影響をもたらすと思います」
 中村享史先生は特に良かった点を三つ挙げる。
  1. 具体物で思考の対象を明確にした
    実際に具体物(リボン)を操作させたことで、学習の基本事項である「倍」の概念が明確になった。その際、長さを明かさなかったため、子どもの思考がより促された。
  2. 子どもが数直線を道具として使いこなしていた
    一人ひとりに数直線をかかせて理解を深めていた。特に、教師とのやり取りを通して子ども自身が数直線を作り上げていくプロセスが良いと感じた。
  3. 子ども同士で考えさせる問い掛けをしていた
    教師が一方的に教えるのではなく、「同じように考えた人はいますか」「この続きが言える人は?」など、子どもの発言をつないで思考を発展させる問い掛けを重視していた。
  活用の視点から全体的に振り返ると、「指導案には子どもに考えさせるための工夫が散りばめられており、実際の授業でも既習内容を基にしっかりと考えられていた。思考力や表現力の育成につながる良い授業だと思います」と評価する。
中村先生からのアドバイス
「活用」を含む授業づくりのヒント
教科書を基にする
◎活用といっても、特別な教材を用意する必要はなく、教科書の素材で十分。ただし、一工夫は必要です。数直線を作成させるなど、子どもの思考を促す工夫を考えてください。
ノートには思考の流れを記録させる
◎単に板書を写させるだけではなく、自分の考えや、良いと感じた友だちの考えをノートに記録させることで、思考力や表現力が育ちます。板書も、思考の流れを表現するものに変える必要があります。子どもの発言の脇に名前を書き添えるなどの工夫を取り入れると良いでしょう。
子どもに考えさせる問い掛けをする
◎問い掛けを見直して、教え込む指導から、子どもに考えさせる指導へと変えていきましょう。子どもからアイデアを引き出し、共有させていくことが教師の役割と言えます。
「学び合い」を重視した活動を取り入れる
◎子どもたちはお互いの意見を聞き合い、取り入れ合う中で思考力や表現力を高めます。最初はペアやグループ活動でも構いません。共同で学び合う活動を定着させましょう。

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