移行措置対応のポイント 第3回 子どもが主体的に考える理科の指導

VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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6年生 単元名「土地のつくりと変化」 (全12時間の8時間目)

目標 地層に見られるしまもようのでき方についてのストーリーを、事実や話し合いに基づいて修正することができる
授業者 小谷内寿信先生 児童数 23人 場所 理科実験室
前時までの授業 単元の最初に化石の実物を与えて地層への関心を高めさせ、校外学習として化石が採取できる小矢部市法楽寺の地層を観察。「地層はどのように出来たか」というストーリーを考える学習に入る。初めはさまざまな考え方が出たが、前時までの学習で「川に流された土が海中で積もった」と考える子どもが多くなった。しかし、層ごとの違い(層を構成する粒の違い)にはまだ意識が向いていない。今回の授業では、海中でどのように地層(しまもよう)が作られるのかを考える。
:教師 C:子ども
  時間 学習内容・活動 子どもの考えを促す工夫教師




0分 【3種類の粒(泥、砂、小石)を混ぜたものが海中に沈む時、しまもようになるかを考える】
黒板に川や海の図を描いてイメージさせる1.
:「皆さんのノートに面白いことが書いてありました。 川の水によって土などが流されて、海でしまもようが作られたと考えている人が多いようです。そこで聞きたいのですが、川の中の粒はどれも同じ?」
:「違う」
:「そうだね、大きいのも小さいのもあるね。ここで問題ですが、それらが一気に流されて海に入ったら、しまもようになると思う?」
数人の子どもが意見を述べる2.
:「粘土とか砂とかいろいろな種類があるから、それぞれの色が混ざって別の色の一つの層になる」
:「色ははっきりと分かれないと思う」
:「全部がそのまま海の底にたまる。何百年、何千年の間に似たような物が何重にもたまって、しまもように なる」
―実験器具を取り出す。水を8割注いだ長さ1メートルのアクリルパイプに3種類の粒を混ぜた物を入れる実験をすることを説明
1. 色や大きさが異なるマグネットを使って3種類の粒を表し、イメージしやすくした
2. 先に何人かに考えを話してもらうことで、他の子どもの思考が動き出して予想を立てやすくなる
写真
マグネットを使って、川に運ばれる土をイメージさせる
結 果 の 予 想 ( 仮 説 )
9分
24分
【実験の予想をノートに書き、学級で共有する】
実験で確かめる問題を板書3.子どもはノートに写し、予想を書く4.
 問題  いろいろな大きさの粒が混ざって流れると、しまもようになるのだろうか?
:「予想の絵を描いたら、その横に考えたわけを文章で 書いてね」
―机間指導をしながら、早く出来た子どもには、図とマグネットを用いて黒板に仮説を表現させる5.
―黒板に書いた3人が理由を発表し6.他の子どもはどの説に賛成するか挙手をする
:「重い方が早く沈むから、大きい粒から順に下になる」 (ア説)
:「大きい粒のすき間に小さい粒が入って、ぐちゃぐちゃ になる」(イ説)
:「小さい方が早く沈むから、小さい粒から順に下にな る」(ウ説)
―黒板に書いていない子の意見も出す。発表をためらう子どもには「もったいない」と言い、子どもが意見を言いやすい雰囲気をつくりサポートする
T:「○○くんのノートには面白い説が書かれていたよ。 発表してくれるかな?」
C:「しまもようになるけど、すべての層に三つの粒が入る。下の層の方が大きい粒が多くなると思う。絵の具みたいに混ざる割合によって色が変わるんじゃないかな」
T:「この説は『イ説』に似ているから、『イ’説』にしよう」
予想の変更を受け付ける7.挙手をさせると、次のように変化した
ア説  9人→7人
イ説  8人→6人
ウ説  3人→2人
イ’説 1人→8人
(1回目の挙手では、二人の子どもの考えがまとまっていなかった様子)
3. 子どもの様子を見ながらゆっくりと問題を板書する。書くのが早い子も遅い子も同時に考え始めさせるため

4. 黒板にアクリルパイプのイメージ図を描き、予想の書き方を示す

5. 早く出来た子は、自分の予想を黒板に書けることを喜ぶ。一方、考えが進まない子は、友だちの予想を参考にして考えられる

6. 説明が少し分かりにくい場合などは、他の子に言い換えさせることもある。異なる表現で説明させることで分かりやすくすると共に、子ども同士がお互いの話をきちんと聞き合っているという雰囲気をつくるため

7. 予想を変更する機会がないと、自分の意見に固執してしまい、他の子どもの良い意見を認められなくなる


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