移行措置対応のポイント 第3回 子どもが主体的に考える理科の指導
石井雅幸

▲石井雅幸

いしい・まさゆき
東京学芸大大学院教育学研究科修了。東京都立小学校教諭を経て現職。専門は、理科教育、生物教育、小学校教育。学校現場での指導助言も多く行う。主著に『小学校 理科の学ばせ方・教え方事典』(共著、教育出版)、『新しい理科教育の理論と実践の方法』(共著、現代教育社)など。


VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【テーマ3】

指導力向上に向けた
学校全体での取り組み

若手の先生も含めた理科の指導力向上には、学校全体で取り組むことが有効だ。
大妻女子大の石井雅幸准教授に課題と方策をうかがった上で、
理科の指導力向上に組織的に取り組む
国立(くにたち)市立国立第五小学校の実践を紹介する。
指導のポイント
学校全体での実技研修や学年ごとの予備実験が、教師一人ひとりの指導力を向上させる
思考力や表現力の育成過程をパターン化。授業研究会でその点を議論すれば、効果は更に高まる
教師間で「子どもが考えることの大切さ」を共有。そこから指導法の検討へとつながる

【理論編】
学習のねらいや指導法を共有して子どもの思考力を育成

大妻女子大家政学部 石井雅幸 准教授

理科指導の難しさ

 教えずに「考えさせる」意識を持つ
 理科の指導について、先生方はどのような課題を感じているのか。2007年に改正された学校教育法第30条第2項で規定されている三つの学力観に基づいて整理します。
(1)基礎的な知識・技能面の指導
 理科の知識や実験方法に不安を抱えている先生が多いようです。「観察や実験の経験が少なく、自信を持って子どもに教えられない」という声をよく聞きます。文系教科が得意な先生や若い先生ほど、その傾向が強いようです。
(2)「思考力、判断力、表現力」の指導
 理科教育の最大のねらいは、問題解決の過程を通して、思考力、判断力、表現力といった力を育てることです。しかし、教師自身がねらいの解釈を適切にしていないために、これらの力を育てるための学習の流れがつくられないまま、授業が進められていることがあります。
 例えば観察や実験は、本来、問題解決の一部分で、仮説を立てて結論を導く過程と共に取り組んで初めて意味を持ちます。ところが、観察・実験自体が授業の目的になっているケースがよく見受けられます。
(3)「学習意欲」を引き出す指導
 観察や実験をする意味を十分に理解させなかったり、知識を覚えさせたりするだけの授業では、子どもは見通しを持てず、学習意欲もわきにくくなります。教師があらかじめ問題解決の流れをつくっておかないと、こうした授業になりがちです。「教えなければならない」という意識が強すぎて、子どもが考える機会を奪っていることもあります。
 このような課題に対し、理科の専門ではない先生が個人で改善を図るのは簡単ではありません。学校全体として、先生方が協力し合いながら指導の改善を目指すことをお勧めします。

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