小学校英語活動 Vol.7 第2回全国小学校英語活動実践研究大会(京都市)から 公開授業 京都市立西陣中央小学校
WEB版 VIEW21[小学版] 教育情報レポート 〜小学校英語活動〜
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カウンターを使って「英語を話す」ことを意識させた

 「英語番組作りに取り組むなかで、英語を意識して使う」という総合的な学習に近いこの単元の1時間目には、グループで計画を立て分担を決めた。「既習の語彙を使う」「長さは3分程度」「全員出演する」のほかは制約を設けず、矢野先生はグループでテーマが重ならないように、決定する前に先生に相談することだけを求めたという。2〜3時間目は台本を作り、練習して試し撮りをする。この2時間のみは矢野先生とALTとのTTで行うので、適切な英語表現などについてALTに質問をしたり、リハーサルを見てもらったりしてアドバイスを受ける。そして本時の4時間目は、試し撮りなどの反省をもとにビデオ撮影を進め、5時間目に完成させて発表会をするという流れになる(表1参照)。

▼表1 「トーキングタイムビデオを作ろう!」全5時間の活動の概要

指導者

目標と主な活動

学級担任

3年間の英語活動を振り返り、グループで番組作りの計画を立てる。

・計画書を作る。・係分担を決める。・ALTへの質問をまとめておく。

2・3

学級担任+
ALT

(TT)

台本を作り、ALTや担任と練習をする。

・台本を作る。・ALTに質問する。・ALTと担任とによるビデオ撮影のプレゼンテーションを見て、ビデオ撮影を試す。・中間発表(前半)

(本時)

学級担任

グループで準備や練習、リハーサルを行い、協力して番組作りを進める。

・中間発表(後半)を見て、意見交換。・台本の修正や練習をして、撮影を進める。

学級担任

グループで番組を完成させ、学級で発表会をする。

・前時に撮影したビデオを発表し合い、感想を話し合う。

 さて、本時の授業開始。Hello!とあいさつをしながら、リレー形式でどんどん友だちと握手をしてウォーミングアップを行った。

 まず、前時に試し撮りをしたビデオを見ながらの話し合いが始まった。スリーヒントで先生の名前を当てさせたり、いくつかの部分を見せながらキャラクターの名前を当てさせるなど、クイズ形式が多かったが、寸劇に仕立てているグループもあった。

 先生は、「伝えようという気持ちが入っているかどうかを見てください。次に、ジェスチャーやカメラの使い方、演じる人たちの様子を見て、意見を言ってください」と視点を提示して3つのグループの試し撮りを再生。カメラの使い方等についての意見が多く出た。

 本番に入る前、「友だちとやりとりするときは、必ずひと言めに英語を使うこと。『なあなあ、○○くん』ではなく、Excuse me〜といった表現を使うこと、困ったときは、魔法の言葉Please〜を使うといいよ」などとアドバイス(注1)。

注1 担任の矢野先生は、ときに日本語、ときに英語を使って活動を進めていたが、矢野先生が「これは必ず英語で」と決めているのは、次の2点だ。1つは子どもをほめるとき。GreatとかSuperなど。もう1つは、Stopとか、Startなど、子どもたちにもなんとなくわかる指示語。ただし、Stopだけだときつい表現になるので、Pleaseをつけているという。あとは、状況に応じて使い分ける。

 そして先生は各グループに1つ、交通量調査などに使うカウンター計を渡した(写真5)。グループで活動中に英語をどれだけ使ったかを数えさせるための小道具だ。

「6年生の発達段階を考えると、『できるだけ英語をしゃべろう』と声をかけても、そう簡単にはしゃべらないと思ったので、この方法を考えました。罰則ではなく、1回しゃべれば1つポイントがたまるという楽しくなるような制限を加えたのです」(矢野先生) 

 6つのグループに分かれ、20分間ほどビデオ撮りを行った。1シーン撮っては再生して確認し、失敗だったと言っては撮り直しをしていた。その間、同じフレーズを繰り返すので、だんだんに上手くなってくるのがわかる。

 先生は最後に各グループにカウンター計の数を尋ねたが、38〜162までと、かなりバラツキがあった。それでも、全員がなんらかのかたちで活動にかかわり、英語を使うことを意識しているように見えた。それには、“ビデオを撮る”という今の子にとって魅力的な課題が大きな役割を果たしているのではないか(写真2〜5)(後述コラム・松川先生の講評参照)。

 

▼ 写真2
写真2
「英語の上手下手よりも、伝えようとする気持ちが大事なんです」担任の矢野智子先生は強調する。
▼ 写真3
▼ 写真4
写真3 写真4
1シーン撮るごとに再生して確認する。うまく撮れていなければ、何度も撮り直す。
▼ 写真5
写真5
英語を話す度にカウンターを押す。こうした仕掛けで英語を使うことを意識させる。

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