ベネッセ教育総合研究所が選ぶ「調査データ クリップ!子どもと教育」

子どもと安全

子どもと安全 〜第2回〜

第2回

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  1. 9割以上の学校で防犯マニュアルを活用
  2. 出会い系サイトに関連した犯罪被害者の8割が18歳未満
  3. 薬物事犯の少年、この10年で減少傾向
  4. 増加傾向にある児童虐待

第1回

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子育ての気がかり、1位は「犯罪や事故に巻き込まれること」水難事故、夏の3か月に集中被害場所、未就学は住宅、小中学生は駐車(輪)場など


第3回

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子どもの犯罪被害の不安は、マスコミ報道から校舎の耐震化率、都道府県により大きな違い10年間で子どもの水死者数は半分に

【2-1】9割以上の学校で防犯マニュアルを活用

学校の安全管理の取り組み状況

出典
「学校の安全管理の取組状況に関する調査結果」文部科学省(2006)
調査対象
全国の学校

学校の安全管理への取り組みに関する調査結果をみると、小中高すべての学校段階で「防犯のマニュアルを活用している」学校が9割を超えている。さらに詳細をみると、学校独自の「危機管理マニュアル」を作成し活用している学校も全体の8割(80.3%)を超えている。

小中学校においては「防犯のマニュアルを活用している」「教職員の防犯訓練等を実施した」「子どもの防犯訓練等を実施した」「学校の安全管理に関し点検を実施した」「通報システムを整備している」「安全を守るための器具を備えている」など、多くの項目で6〜7割を超えており、学校の防犯意識の高さがうかがえる。
 また、防犯ブザーの配布(小学校69.5%、中学校43.8%)や、地域ボランティアによる学校内外の巡回や警備が行われている(小学校64.2%、中学校59.3%)など、学校内だけでなく、通学路の安全に関する配慮がなされていることがわかる。

「警備員を配置している」学校は全体としてはまだ1割程度だが、国立学校では99%、私立学校では約半数の学校で配置されている。

【2-2】出会い系サイトに関連した犯罪被害者の8割が18歳未満

出会い系サイトに関連した検挙事件の被害児童件数の推移被害児童の出会い系サイトへのアクセス手段

出典
「平成18年中のいわゆる出会い系サイトに関係した事件の検挙状況について」警察庁(2007)
調査対象
全国

出会い系サイトに関連した検挙事件の被害児童数は、平成14年からほぼ横ばいではあるが、いずれの年度も18歳未満の児童が全被害者の80%以上を占めている(平成18年は、全被害者1,387人中1,153人)。罪名をみると、児童の性的被害に係る事犯が検挙全体の80%近くを占め(平成18年79.2%)、毎年少数ではあるが殺人や強姦などの重要犯罪の被害者もでている。

被害児童の出会い系サイトへのアクセス手段としては、携帯電話が96.6%を占める。携帯電話の所有率が中学生で約5割、高校生では9割以上という現状を考えると(『携帯電話の利用実態』第1回【1-1】参照)、容易に出会い系サイトにアクセスできてしまう環境にあるといえる。

「平成18年版 警察白書」によると、中高生の2.6%が出会い系サイトを「利用したことがある」と回答しており、その中の3割近くの中高生がそこで知り合った相手と実際に「会ったことがある」と回答している。携帯電話で容易にアクセスでき、知り合った相手とも気軽に会ってしまうことがさまざまな犯罪に巻き込まれるきっかけの1つになっていると思われる。

【2-3】薬物事犯の少年、この10年で減少傾向

薬物事犯の少年の検挙人員の推移覚せい剤乱用少年の検挙人員の推移(中学生・高校生)

出典
「少年非行等の概要(平成18年1〜12月)」警察庁(2007)
調査対象
全国

薬物事犯の少年(20歳未満)の検挙人員の推移をみると、「毒物及び劇物取締法違反」(ほとんどがシンナー等の摂取、所持によるもの)がこの10年で激減していることがわかる。「覚せい剤取締法違反」もこの10年でかなり減少しており、中高生の検挙人数も同様に減少している。

中高生の喫煙率もこの10年でかなり減少しており、平成12年から16年で4割減となっているが(『健康』第2回【2-4】参照)、「毒物及び劇物取締法違反」の同時期の減少率も4割で、ほぼ同じ割合となっている。学校等における喫煙防止教育をはじめとする保健教育の成果があらわれているように思われる。

一方、「大麻取締法違反」「麻薬及び向精神薬取締法違反」による検挙者は薬物事犯全体からみると少数ではあるが、この10年で増加傾向にある。MDMA等の合成麻薬のように、中高生が入手しやすい薬物が登場したことも一因と考えられる。

【2-4】増加傾向にある児童虐待

児童虐待の被害児童数(様態別)

出典
「少年非行等の概要(平成18年1〜12月)」警察庁(2007)
調査対象
全国

過去8年間の児童虐待事件の被害児童数(18歳未満)の推移をみると、平成12年、平成16年で大きく増加していることがわかる。平成12年に児童虐待防止法が施行され、平成16年には「児童虐待を発見した者の通告」が義務付けられたことが影響していると考えられる。

児童虐待には、殺人、傷害、暴行などで検挙された「身体的虐待」、強姦、強制わいせつ、児童福祉法違反などで検挙された「性的虐待」、保護責任者遺棄、重過失致死傷などで検挙された「怠慢又は拒否」などがある。このなかで「身体的虐待」「性的虐待」が件数も多く、増加傾向にあるように見てとれるが、「怠慢又は拒否」は露見しにくいといった面も忘れてはならないだろう。
 また「身体的虐待」や「怠慢又は拒否」の結果、死に至る児童が毎年数十人(平成18年59人)いることも見のがせない。

参考資料
「学校の安全管理の取組状況に関する調査結果」文部科学省(2006)
「平成18年中のいわゆる出会い系サイトに関係した事件の検挙状況について」警察庁(2007)
「少年非行等の概要(平成18年1〜12月)」警察庁(2007)