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学力と学習

学力と学習 〜第1回〜

第1回

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  1. 知識はあるが、考える力、伝える力の弱さが課題
  2. 知識基盤は備えているが、応用が苦手な日本の15歳
  3. 自発的・計画的に学習に取り組む児童・生徒ほど正答率が高い
  4. 学習に対してあまり積極的でない日本の高校生

第2回

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学校段階が上がるにつれ、低くなる授業の理解度 学校では発展的な学習指導より、補充的な学習指導 中高生に比べて、得意とすることが多い小学生など


第3回

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正答率の分布、やや正規分布に近づく 漢字の読み書きの正答率、時代を反映 4年生以降に高まる算数の苦手意識

【1-1】知識はあるが、考える力、伝える力の弱さが課題

全国学力調査の結果 A問題とB問題の正答率とその分散

出典
「平成19年度 全国学力・学習状況調査 調査結果のポイント」国立教育政策研究所/文部科学省(2007)
調査対象
全国(一部の市の学校を除く国公立すべての学校と私立の6割余りの学校)【小学校調査】小学校第6学年、特別支援学校小学部第6学年(約114万人)/【中学校調査】中学校第3学年、中等教育学校第3学年、特別支援学校中学部第3学年(約108万人)

2007年4月に全国の小中学校で実施された「全国学力・学習状況調査」の結果をみると、全体的な傾向として、基礎的な「知識」を問うA問題に対して、「活用」する力を問うB問題の平均正答率の低さが浮き彫りとなった。

国語では、小学校のA問題の平均正答率が81.7%なのに対して、B問題が63.0%と18.7ポイント低く、中学校では、A問題の82.2%に対して、B問題が72.0%と10.2ポイント低くなっている。また、算数・数学では、小学校のA問題の平均正答率が82.1%なのに対して、B問題が63.6%と18.5ポイント低く、中学校では、A問題の72.8%に対して、B問題が61.2%と11.6ポイント低くなっている。

B問題では、身につけた知識・技能等を活用する力が問われているため、基礎的な知識を問うA問題よりも正答率が低くなることはある程度予想されたことではあるが、今回の結果を受け、知識の習得だけでなく、得た知識をもとに考える力(思考力、判断力)やそれを伝える力(表現力)といった、知識を活用するために必要な力をいかに育成するかが今後の課題であるといえよう。

【1-2】知識基盤は備えているが、応用が苦手な日本の15歳

学力の国際比較結果 − 学習到達度調査(PISA2006)トップ10 −

出典
「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2006年調査」OECD日本センター(2007)
調査対象
57か国・地域の15歳児約40万人(日本 約6,000人)

2006年に実施された国際的な学習到達度調査(PISA)の結果をみると、日本は参加57か国・地域中、「科学的リテラシー」が6位、「数学的リテラシー」が10位、「読解力」が15位という結果になった。

2003年に実施された前回調査と比べると、「科学的リテラシー」が2位から6位、「数学的リテラシー」が6位から10位、「読解力」が14位から15位と、3分野すべてにおいて順位を落としている。参加国・地域が16増えたことや、「読解力」の点数が前回と同じだったことなどから、成績が低下したとは単純には言いきれないものの、過去3回の得点を比較してみると、日本の高校生の学力が低下傾向にあることがみてとれる。

同報告書によると、日本の生徒はさまざまな科学分野にわたりすばらしい知識基盤を備えているが、初めて出会う状況で、「知っていることから類推し、知識を応用する必要がある場合」や「問題と取り組む前に科学的問題を特定し、組み立てる必要がある場合」は成績が下がるとされている。これは今回の調査で明らかになった重要な点として認識されており、また、知識を活用する力が課題とされた前出の「全国学力・学習状況調査」(【1-1】参照)の結果とも一致する。

【1-3】自発的・計画的に学習に取り組む児童・生徒ほど正答率が高い

学力と家庭学習の関係

出典
「第4回学習基本調査・学力実態調査 ダイジェスト版」ベネッセ教育研究開発センター(2008)
調査対象
全国の小学5年生(2,446名)、中学2年生(1,723名)

小中学生を対象に、家庭学習の様子と国語、算数・数学の平均正答率の関係を調べた調査結果をみると、与えられた課題を着実にこなしたり、自発的・計画的な学習をしている児童・生徒は正答率が高い傾向がみられることがわかった。

具体的にみると、「出された宿題をきちんとやっていく」という項目に対し、小学生では「あてはまる」と回答した児童の正答率は、国語60.6%、算数66.5%であり、「あてはまらない」と回答した児童の正答率(国語44.2%、算数48.1%)に比べ、国語で16.4ポイント、算数で18.4ポイント上回っている。
 中学生では「あてはまる」と回答した生徒の正答率は、国語56.9%、数学60.0%であり、「あてはまらない」と回答した生徒の正答率(国語45.5%、数学40.0%)に比べ、国語で11.4ポイント、数学で20.0ポイント上回っている。

そのほか「嫌いな科目の勉強も一生懸命する」「家族に言われなくても自分から進んで勉強する」「授業で習ったことは、その日のうちに復習する」「計画を立てて勉強する」についても、いずれも「あてはまる」が「あてはまらない」を上回っている。

【1-4】学習に対してあまり積極的でない日本の高校生

高校生の学習の仕方について 日米中比較

出典
「高校生の学習意識と日常生活」(財)日本青少年研究所(2005)
調査対象
日本・米国・中国の高校生(各国1,320人、1,020人、1,309人)

日米中3か国の高校生の学習意識について調べた結果をみると、「宿題をきちんとやる」という項目に対し、「よくあてはまる」「ややあてはまる」と回答した生徒は、米国で86.0%、中国で82.1%とともに8割を超えているのに対し、日本では53.0%と5割強にとどまっている。また、同項目に対し、日本では14.3%の生徒が「あてはまらない」と回答しており、米国1.3%、中国2.4%と大きな差がみられた。
 同様に「授業の内容がわからなければ、先生に積極的に聞く」では、「よくあてはまる」「ややあてはまる」が、日本30.0%、米国70.0%、中国53.4%、「授業で習ったことをその日に復習する」では、日本9.6%、米国39.8%、中国41.8%と、いずれも米中に比べて日本は20〜40ポイント低い値となっている。

一方、「授業中、よく寝たり、ぼうっとしたりする」は、7割以上の日本の生徒が「よくあてはまる」「ややあてはまる」と回答しており、米国48.5%、中国28.8%を大きく上回っている。
 これらの結果から、学習に対してあまり積極的でない日本の高校生像が浮かび上がってくる。

参考資料
「平成19年度全国学力・学習状況調査 調査結果のポイント」国立教育政策研究所/文部科学省
「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2006年調査」OECD日本センター
「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2003年調査国際結果の要約」文部科学省
「第4回学習基本調査・学力実態調査 ダイジェスト版」ベネッセ教育研究開発センター
「高校生の学習意識と日常生活」(財)日本青少年研究所