ベネッセ教育総合研究所が選ぶ「調査データ クリップ!子どもと教育」

学力と学習

学力と学習 〜第2回〜

第2回

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  1. 学校段階が上がるにつれ、低くなる授業の理解度
  2. 学校では発展的な学習指導より、補充的な学習指導
  3. 学習指導要領改訂で、50年ぶりの授業時数増
  4. 中高生に比べて、得意とすることが多い小学生

第1回

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知識はあるが、考える力、伝える力の弱さが課題 知識基盤は備えているが、応用が苦手な日本の15歳自発的・計画的に学習に取り組む児童・生徒ほど正答率が高いなど


第3回

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正答率の分布、やや正規分布に近づく 漢字の読み書きの正答率、時代を反映 4年生以降に高まる算数の苦手意識

【2-1】学校段階が上がるにつれ、低くなる授業の理解度

授業の理解度(学校段階別、経年変化)

出典
「第4回学習基本調査・国内調査(速報版/報告書)」ベネッセ教育研究開発センター(2006)
調査対象
全国の小学5年生(2,726名)、中学2年生(2,371名)、高校2年生(4,464名)

小中高生を対象に授業の理解度についてたずねた調査結果をみると、「ほとんどわかっている」+「70%くらいわかっている」児童・生徒が、全般的に増加していることがわかる。
 1990年と比べると、小学生では、すべての教科で約6〜12ポイント上昇しており、中学生や高校生でも「国語」「数学」「理科」の理解度は上昇している。2002年からの新学習指導要領の実施により、学習内容が厳選されたことが、少なからず影響しているものと考えられる。

しかし学校段階別にみると、どの教科においても学校段階が上がるにつれて、授業の理解度は低くなる傾向がみられる。

【2-2】学校では発展的な学習指導より、補充的な学習指導

学力向上に向けた学校の取り組み

出典
「平成19年度全国学力・学習状況調査 調査結果のポイント」国立教育政策研究所/文部科学省(2007)
調査対象
全国の小中学校

2007年4月に全国の小中学校で実施された「全国学力・学習状況調査」の際に、学校における学力向上に向けた取り組みや、教科の指導方法についてたずねた結果をみると、学力向上に向けた取り組みとして、多くの学校で「朝の読書」などの一斉読書の時間を設けていることがわかった(小学校91.8%、中学校83.5%)。
 また、「放課後を利用した補充的な学習サポート」を実施している学校は小学校で40.9%、中学校で56.8%、「長期休業期間を利用した補充的な学習サポート」を実施している学校は小学校で47.7%、中学校で75.5%となっている。

教科ごとの取り組みをみると、国語の補充的な学習指導については、「よく行った」「どちらかといえば、行った」を合わせると、小学校で65.1%、中学校で70.6%、算数・数学の補充的な学習指導については、小学校で87.7%、中学校で86.9%の学校が実施していることがわかる。これに対して発展的な学習指導は、国語で3〜5割、算数・数学で6割前後にとどまっている。

【2-3】学習指導要領改訂で、50年ぶりの授業時数増

学習指導要領の変遷による授業時数の変化

出典
「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ 関連資料」文部科学省(2007)

2007年11月7日に発表された、文部科学省「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ 関連資料」より、学習指導要領の変遷および授業時数等の変遷に関する資料をみると、今回の改訂案では、小中学校全学年で授業時数の増加が盛り込まれる形となった。

改訂案によると、小学6年生では、現行の945時間から980時間に35時間増加、中学3年生でも、現行の980時間から1,015時間に35時間増加することになる。小学校6年間では278時間、中学校3年間では105時間の増加となり、授業時数が増加するのは、昭和33年の改訂以来、実に50年ぶりとなる。

現行学習指導要領は、『自ら学び自ら考える力の育成』という観点から、総合的な学習の時間の創設や中学校における選択教科の授業時数を充実し、必修教科の授業時数を削減した。しかし、さまざまな学力調査の結果、「子どもたちは知識はあるが、それを活用するのが苦手」といった課題が明らかになってきた(『学力と学習』第1回【1-1】【1-2】参照」)。今回の改訂案はそれらの課題を踏まえ、「確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保」として授業時数の増加を盛り込んでいる。

【2-4】中高生に比べて、得意とすることが多い小学生

得意なこと、苦手なこと(学校段階別)

出典
「第1回子ども生活実態基本調査報告書」ベネッセ教育研究開発センター(2005)
調査対象
小学校4年生〜高校2年生

小中高生を対象に、どのようなことが得意であるかをたずねた調査結果をみると、小学生は「論理的に(すじ道を立てて)ものを考えること」を除くすべての項目において、中学生や高校生に比べて得意とすることが多く、有能感が高いことがわかった。

得意と思う内容をみてみると、「スポーツをしたり、体を動かしたりすること」が全学校段階で7割前後ともっともポイントが高く、「物を作ったり絵を描いたりすること」「ものを覚えること」「楽器を演奏したり歌を歌ったりすること」も、5割〜6割の子どもが得意としている。

「難しい問題をじっくり考えること」「問題の解き方を何通りも考えること」については、小学生と中高生で大きな差がみられた。逆に、「論理的に(すじ道を立てて)ものを考えること」については、学校段階が上がるにつれてポイントが高くなっている。

参考資料
「学習基本調査・国内調査(速報版/報告書)」ベネッセ教育研究開発センター
「平成19年度全国学力・学習状況調査 調査結果のポイント」文部科学省
「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ 関連資料」文部科学省
「第1回子ども生活実態基本調査報告書」ベネッセ教育研究開発センター