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英語教育 〜第1回〜
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文部科学省の資料より世界の母語人口(上位10言語)をみてみると、中国語の母語人口が8億8,500万人と圧倒的に多く、次いで英語が4億人、スペイン語が3億3,200万人となっている。日本語の母語人口は1億2,500万人で、第9位にあげられている。
言語別使用人口でみても、中国語の使用人口は10億7,500万人と圧倒的に多く、英語の使用人口(5億1,400万人)の2倍にあたる人々が中国語を使用していることがわかる。
しかしながら、英語を公用語または準公用語とする国は世界に54か国あり、それらの国々の人口は21億人を超える。これは、世界人口の約3分の1にあたる人々が英語を公用語・準公用語として使用している国に暮らすことになり、英語は世界の共通言語としてコミュニケーションの中心的役割を果たしていることが再認識される。
文部科学省の英語教育に関する調査資料をもとに、小学校から大学までに履修する外国語(小学校では「外国語活動」)の授業時数を算出し、それぞれ時間換算をしてみたところ、日本の学校で外国語(英語)教育にあてる時間は、おおよそ、小学校で18時間、中学校で266.7時間、高等学校で361.7時間、大学で90時間、合計736.4時間という結果が得られた。
カナダですでに40年近く実践されている「イマージョン方式」(学校教育の中で2つの言語を学習言語として使用)による英語とフランス語のバイリンガル教育の実践研究においては、5,000時間くらいかけると、聞く力・読む力が母語話者レベルかそれ以上に達し、話す力・書く力は母語話者レベルに近づくとの結果が得られているという(BERD No.05(2006年7月)Interview 中島和子『母語以外の言葉を子どもが学ぶ意義−バイリンガル教育からの視点−』)。
日本の学校における英語教育とは授業方法からして異なるが、この5,000時間という時間数だけをみても、到達目標の設定と、それに対してかけるべき時間数を考えることが必要であることがわかる。
中高生の英語力について調べた調査結果をみてみると、中学3年生で「英検3級以上を有する生徒」または「英検3級以上は取得していないが、相当の英語力を有すると思われる生徒」は、全体の33.7%であった。財団法人日本英語検定協会によると、英検3級は「中学卒業程度。身近な英語を理解し、また使用することができる」とされているが、中学校3年生でこのレベルに達している生徒は、全体の約3分の1にとどまっていることがわかる。
一方、高校3年生で「英検準2級以上を有する生徒」または「英検準2級以上は取得していないが、相当の英語力を有すると思われる生徒」は、全体の27.8%であった。同協会によると、英検準2級は「高校中級程度。日常生活に必要な英語を理解し、また使用することができる」とされているが、高校3年生でこのレベルに達している生徒は、全体の4分の1強にすぎないことになる。
日本と韓国の高校生を対象に、日常における英語の使用経験についてたずねた調査結果をみると、「読む」「聞く」「話す」「書く」すべての技能分野において、日本の高校生の英語使用経験率が韓国の高校生の経験率を大きく下回っていることがわかった。
「読む」経験では、英語で書かれた説明書や教科書以外の英語の本、英語で書かれたホームページや電子メール、英字新聞等を日常的に少しでも読んでいると答えた生徒は、韓国では58.2%〜79.4%であったのに対し、日本ではわずか14.1%〜32.0%であった。
「聞く」経験についても、「英語での天気予報を聞く」は、韓国54.1%、日本8.6%、「テレビ・ラジオでの英語音声のニュースを聞く」は、韓国60.6%、日本27.3%と大差がみられた。
同様に「話す」「書く」経験においても、「英語で道を尋ねられて答える(韓国76.7%、日本24.5%)」、「英語で日記を書く(韓国73.8%、日本22.5%)」などにも大差がみられる。
社会環境や国の政策の違いによる影響が考えられるものの、日本の高校生の日常における英語使用経験の低さがみてとれる。