教育フォーカス

【特集12】ICTメディアで変わる中高生の生活世界

[第1回] 「ポリメディア環境」での中学生におけるネットアクセス機器が持つ意味 [3/5]

3. 中学生におけるPMPによるネット利用

■ PMPでネットにアクセスする中学生の特徴

中学生におけるPMPでのネット利用者を、表2-3と同様、PMP非利用のネット利用者、ネット非利用者との対比において分析すると、表3-1のように主な結果をまとめることができる。表3-1の項目1~8にみられるように、PMPによるネット利用者は、PMP非利用者に比べて、SNSなどのオンラインコミュニケーション利用が活発であり、ネット利用時間も長くなる傾向がある。本調査では、LINE、twitter、フェイスブックの3サービスについて、個別に利用をきいているが、PMP利用者では82.2%がLINEを利用し、三者とも利用していない生徒は15.8%に過ぎない(項目3、7)。ネット動画に関しては、利用者における平均利用時間に差は見られないが、接触率はPMP利用者が高い(項目8、9)。したがって、勉強と並行するメディア接触行動も多く(項目15)、ネット非利用者はテレビをみながらするかどうか程度だが、PMP利用者は平均して2つ以上の並行行動を行っている。

表 3-1 中学生のPMP利用/非利用、ネット非利用によるネット利用、メディア利用、学習関連データ

中学生のPMP利用/非利用、ネット非利用によるネット利用、メディア利用、学習関連データ

このようにPMP利用者は、ネット利用は活発な反面、PMP非利用者、ネット非利用者双方よりも、テレビ視聴時間、ゲーム利用時間が若干短い(但し、ゲーム利用率自体は高い)(項目10~13)。また、長時間のネット利用、コミュニケーション活動は、勉強時間に負の影響を与えてはおらず(項目14)、成績の自己評価も、平均値としては3つのグループで最も高い(統計的有意差はないが)(項目16)。

■ PMPのみでのネット利用とPMPとPC併用でのネット利用

ところで「PMPネット利用者」は、ネットアクセスがPMPのみに限定されるわけではなく、PMP以外に、PC、スマホ、タブレットなどでネットアクセスを行う回答者も含まれている。「ネットはPMPだけ」と、「PCも利用」する場合、さらには、より多くのデバイスを組み合わせる場合では、利用法が異なるだろう。そこで、「PMPネット利用者」を、①PMPのみでネット利用する生徒(本節では「PMPのみ」と表記)、②モバイルはPMPのみだが、PCでもネットを利用する生徒(「PMP+PC」)、③PMP以外にスマホやタブレット、ゲーム機を利用したり、さらにPCも利用したりする生徒(「PMP+その他」)の3つにさらに細分化して分析することにした。高校生では、①、②はPMPネット利用者の1割にも満たないが、中学生では、①30.0%、②27.9%、③42.2%と①、②も相対的に大きく、①、②、③を比較分析することが可能である。

その結果は、表3-2のようにまとめられる。まず、「①PMPのみ」の場合、LINE利用率(項目1)は最も高いが、ネット動画(項目7)、ゲーム(項目9)、ネット利用時間(項目4)は、3者の中では最も短い。つまり、LINEを介した既知の関係にある人々とのオンラインでの交流に利用の中心がある。また、オン友がいる割合(項目12)、匿名掲示板閲覧・書込利用率(項目13)はPMP非利用のネット利用者を含め最も低く、オンラインに深くのめりこむ割合が少ない。そして、PCを日常的に使うわけではないため、キーボード操作に慣れていない(項目14)。

表 3-2 中学生のPMPによるネット利用類型別のネット利用、学習関連データ

中学生のPMPによるネット利用類型別のネット利用、学習関連データ

他方、「②PMP+PC」は、オン友がいる割合(項目12)、匿名掲示板閲覧・書込利用率(項目13)が最も高く、ネット動画利用時間(項目7)、ゲーム利用時間(項目9)の1日平均値も最も長い。つまり、「②PMP+PC」は、オフラインのリアルな生活からは切り離されたオンラインの活動に積極的な傾向が強い。これは、自室TV・PCの割合(表2-4)が「②PMP+PC」で高いことも関係しているだろう。ただ、こうしたオンラインの積極的長時間利用は、勉強時間、成績に負の影響を与えているわけではない(項目10、11)むしろ、「②PMP+PC」は最も勉強時間が長く、成績も平均が3.2と唯一3を越えており、他の区分いずれよりも有意に高い(5%水準、t検定)。

保護者への調査がなく、家庭背景に関する情報がないため、これ以上の分析は難しいが、本節の議論をまとめると、まず、PMPでのネット利用者は、PMP非利用のネット利用者に比べ、表3-2にあげてあるように、インターネット利用が総じて積極的である。その中でおそらく、「①PMPのみ」は、親がPC、携帯・スマホ利用を制限する一方、中学生の生活におけるネットコミュニケーションの不可欠性から、家庭でのWifi接続で利用可能なPMP利用を是認していると考えることができるだろう。そして、「②PMP+PC」は、保護者の意識が高く、そうしたPMPの役割に、PCネットの可能性にも中学時代接するよう、環境を作っているように思われる。PMP利用者に見られるネットの積極的利用は、勉強時間や成績と直接的に結びつくものではなく、ただ、「①PMPのみ」、「②PMP+PC」は保護者の情報環境コントロールの意図が明確にあり、「②PMP+PC」の場合には、基本的には成績と正に結びついている。

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