教育フォーカス

【特集12】ICTメディアで変わる中高生の生活世界

[第2回] 二つの時間を過ごし分ける――少年少女の「社会」変容 [2/4]

3. ネット社会への「見るだけ参加」

では、ネット社会で子どもたちはどう生きているか。ネット社会の社会成員となる基礎的手段がスマホである点に留意(中学生のアクセス手段は分散しており、「ネット社会を生きる」上での基礎的手段を自前でコントロールしにくい)して、高校生を中心にみてゆく。

ネット社会で過ごすもっとも幅広い経験は、観察とそのための(受動的)アクセスの次元だろう。動画サイトを見る、関心のあるサイトにアクセスして読む(見る)等がそれに当たる。前者では、ネットを利用する中学生の3割超、高校生の27.5%が「ほぼ毎日」、後者では高校生が3割、中学生でも2割が毎日アクセスしている(図1)。週1~4回のアクセス層(高校生で5~4割)を加えれば、ネット社会に出かけてみるのが普通であり、多数派を占めていることがわかる。情報検索も同様に多くが利用しているが、リアル社会で出かけるための情報収集なども含むから、リアル社会の延長でのネット利用と考えることもできる。リアル社会にも多くのヴァーチャルな環境(手段)が組みこまれ、それらを含めた全体を「現実」と私たちは考えているから、「ネット社会に出かけてゆく」ととらえるか、「ネットを利用して現実の生活を送る」ととらえるかは、簡単ではない。テレビを視ることは現実の世界を生きることはまったくちがうとも言えるはずだが、テレビ視聴はリアル社会の一部だと信じられている。テレビがつたえる世の中と自分が現に過ごしている世界とは地続きで、一つの社会だという確信があるからだ。ネット・サーフィンも同様に考えて良さそうだが、受けとり方は少しちがうようだ。「占いツクール」のようなサイトで、それぞれが好みの物語を読むような場合、ネット社会に特徴的な「視聴」のメカニズムがあり、それはリアル社会での「読書」と同じではない。コミケでの同人誌購入には近いが。情報収集のためのアクセスはその意味では両義的で、どちらの社会に「いる」か、曖昧である。

図1 インターネットの利用内容と頻度

インターネットの利用内容と頻度

注)対象は、インターネット利用者。中学生2,796名、高校生6,070名。

社会のできごとを知るための手段は圧倒的にテレビだが、高校生ではツイッターを通じての情報入手が、家族との会話(35.1%)を上回り、約4割に達する点は興味深い(図2)。女子では45.6%であるから、影響力の大きさが知られる。ネットのまとめサイト、掲示板などを合わせると、新聞利用を完全に上回ることになる。ツイッターでフォローする対象には、企業等の公式アカウントもあるから、ツイッターがリアル社会のできごとにアクセスする一つの径路にすぎないとも言えるが、同時に、ツイッターを通じてネット社会でつながりをつける(情報)行動であるという側面を無視できない。

図2 社会のできごとに関する情報源

社会のできごとに関する情報源

注1)「 ネット経由」とは「新聞社のニュースサイト」「ポータルサイトの運営するニュースサイト」「LINE」「Twitter」「SNSサイト(mixi、Facebookなど)」 「インターネットの掲示板」「インターネットのまとめサイト」のいずれかに該当する割合。

注2)対象は、インターネット非利用者も含む回答者全体。中学生3,203名、高校生6,265名。

ネット動画視聴時間がテレビ視聴時間と同じか、テレビより長い高校生が37.1%に達する点にも注目したい。彼ら、彼女らはネット社会での視聴者であり、そうした視聴者を産むほどにネット社会の存在感は増していると推測できるからである。

ネット社会で情報をえることに特有の受けとめ方、禁忌、倫理等の問題が生まれるのは当然のことである。たとえば、ウィキペディアをレポートなどで使ってはいけないという注意は、ヒヤリングに拠るかぎり、浸透しているようだが、これは、ネット社会にある情報の信頼性が、取り立てて問題とされる一例だろう。「ネット上の情報について正しさを認識する方法がわからない」と回答した高校生はネット利用者の半数に達しており、信頼性の問題はウィキ以外にも当然ながら存在する。リテラシーがないのではなく(中学1,2年生で「わからない」と回答したのは35%超だからといって、高校生よりリテラシーがあるとは判断できない)、ネット社会に流布する情報の真偽を確かめる確立された手続き、検証手段がないのである。高校生はネット社会に特有の情報流通、情報配置のあることを知っていると考えた方がよい。

図3 情報リテラシー

情報リテラシー

注1)「 とてもあてはまる」+「まああてはまる」の%

注2)選択肢は、「とてもあてはまる」「まああてはまる」「あまりあてはまらない」「まったくあてはまらない」の4択。

注3)対象は、中1生911名、中2生946名、中3生939名、高1生3,231名、高2生2,839名。

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