教育フォーカス

【特集13】大学での学びと成長 ~卒業生の視点から振り返る

[第2回] 卒業生のキャリア意識と大学時代の成長実感 ―大学における「キャリア教育」推進の今後のあり方- [10/10]

5.おわりに -大学における「キャリア教育」推進の今後のあり方-

この15年余り、大学における「キャリア教育」はその量的拡大を第一義とし、各種調査でも示されているように(例えば、日本学生支援機構2014)、実際に多くの大学での導入や浸透がみられるようになった。これを「キャリア教育」推進のファーストステージとすれば、今後はその質的深化をも視野に入れたセカンドステージに移行していくべきである。

その際には、「キャリア教育」としての内容の吟味、成果の検証などが当然求められるだろう。望月(2012)は「第2回 大学生の学習・生活実態調査」の結果に基づき、「大学におけるキャリア教育や支援を系統的に行い、2年生から3年生へと「活用される」働きかけを緩やかにつないでいく必要性が示唆されている。」と指摘しているが、本稿での分析からは、学生が自身のキャリア意識形成に向き合えるような機会や環境を「キャリア教育」として提供し、充実させていくだけでなく、「学生の能動的関与」、すなわち学生自身が当事者としてこうした機会や環境に能動的に関わり、それを活かせるように促していくことの重要性が示唆されている。

学生の就職状況を高めることを目的とするのであれば、そのためにより直接的で即効性があるような教育や支援を数多く提供し、学生にはそれへの関与を半ば義務として課していくことも有益であるかもしれない。しかし、「キャリア教育」の本来の目的に沿って、学生の卒業後のキャリア意識形成へとつなげていくことを目指すのであれば、「キャリア教育」という名のシャワーを学生が受け身なままで浴びせ続け、手取り足取り動かすだけでは、十分な成果は期待できないだろう。

【参考文献】
ベネッセ教育総合研究所(2015)『速報版 大学での学びと成長に関するふりかえり調査』
国立大学協会 教育・学生委員会(2005)「大学におけるキャリア教育のあり方-
キャリア教育科目を中心に-」
(最終確認日:2015年11月23日)
松本留奈(2015)「大学卒業後5年目までの社会人調査から見えたこと-社会での活躍を支える力とは-
『Benesse i-Career設立記念 大学シンポジウム2015 学生の成長と社会での活躍-
「まなぶとはたらくをつなぐ」を考える-』pp18-35.
望月由起(2012)「大学における系統的なキャリア教育・支援の必要性
―大学2年生から3年生へと「活用される」働きかけを緩やかにつなぐ―」
Benesse教育研究開発センター『第2回 大学生の学習・生活実態調査報告書』pp.18-19.
日本学生支援機構(2014)「大学等における学生支援の取組状況に関する調査(平成25年度)」
(最終確認日:2015年11月23日)
坂柳恒夫(1991)「進路成熟の測定と研究課題」『愛知教育大学教科教育センター研究報告』15,pp269-80.
Schein, E. H. (1978) Career Dynamics: Matching Individual and Organizational Needs. Reading, MA: Addison-Wesley. (二村敏子・三善勝代訳(1991)『キャリア・ダイナミクス―キャリアとは、生涯を通しての人間の生き方・表現である。』白桃書房)

Topへ戻る

 【特集13】 一覧へ