教育フォーカス

【特集13】大学での学びと成長 ~卒業生の視点から振り返る

[第4回]  社会人は、自らの大学教育の経験を通した成長をどのように認識しているのか ―若年層の「ゼミ・研究室活動」経験の自由記述回答から見えてきたこと [2/6]

Ⅱ.社会人は、大学時代のどの活動群の経験を通して成長したと実感しているのか ―「正課学習」群の経験による成長実感の多さ

まず、大卒社会人の人々が、大学時代のどの経験を通じて、成長を実感しているかを確認してみたい。今回の分析対象である自由記述と対となっている選択式設問の12の選択肢を、以下5つの活動群に分類して、それぞれの選択割合を集計したものが表1である。


正課学習 : 1.大学の授業、2.ゼミ,研究室活動、3.卒業論文や卒業研究
正課外学習・活動 :
 
4.授業以外の自主的な勉強(資格試験など)、5.留学、
6.サークルや部活動、8.社会活動(NPO活動、ボランティアなど)
就職・仕事関連活動 : 7.アルバイト、9.就職活動、10.インターンシップ
その他 : 11.その他
特に成長を感じた経験はなかった : 12.特に成長を感じた経験はなかった

表1:年代別の「大学時代、特に成長を感じた経験」に関する選択式回答結果

表1:年代別の「大学時代、特に成長を感じた経験」に関する選択式回答結果

※上記画像をクリックすると拡大します。

5つの活動群の括り分類でみれば、大学教育のコアでもあるゼミ・研究室活動や卒業論文や卒業研究および大学の授業の合計の「正課学習」群の各種経験において、年代を問わずもっとも多くの社会人が、成長を実感していることが確認でき、いずれも約4割前後を占めていた。

次いで高かった就職・仕事関連活動(アルバイト、就職活動、インターンシップの合計)は、2割程度が選択していたアルバイト以外の項目では低く、活動群の括りで見ると25%程度であり、「正課学習」群全体と比べると15%程度低くなっている。

このほか、「正課外学習・活動」群についても2割程度の学生が成長を実感している。この「正課外学習・活動」群には、授業以外の自主的な勉強(資格試験など)・留学・サークルや部活動・社会活動(NPO活動、ボランティアなど)等が含まれるが、その中ではサークルや部活動が15%前後とその大半を占めていた。

ちなみに、経験項目単体で見れば、アルバイトの経験による成長実感が19~22%と最も高い。しかし、正課学習群の「ゼミ・研究室活動」と「卒業論文や卒業研究」は重なり合いも多い項目であり、それらをあわせるといずれも26~29%程度とアルバイトの割合より大きくなっている。

以上をまとめれば、大学の教育・学習活動外のアルバイト経験において成長実感がある層は一定程度大きいが、それにも増して、大学の正課学習の様々な活動において成長を実感した層全体のほうが多いことが指摘できる。とくに若年層では、アルバイト経験に成長実感を持っている層の2倍以上多くの大卒社会人が、正課のゼミ・研究室活動、卒業論文・卒業研究、大学の授業のいずれかに成長実感を持っており、大学の教育・学習活動を通して成長したと考えていることが明らかとなった。

なお、若年層と中年層との間での差異がやや大きかったのは、「正課学習」群における経験であり、若年層の方が3%以上多く「成長を感じる経験」として挙げている。中でも、「ゼミ・研究室活動」の割合が高い。本稿では、この若年層の「ゼミ・研究室活動」について注目し、自由記述からより詳しく内容を分析するものである。

本稿で主に分析する自由記述データの概要は以下の通りである。

【本稿で分析する自由記述データの概要】
<対象となるデータ>
 1,781件
 若年層(23-40歳)の回答の中の、「ゼミ・研究室活動」部分での選択式設問である問41での
 選択者実数1,781名のデータに対応する問42「特に成長を感じた経験に関する自由記述」回答
<対象データ1,781名分の自由記述内訳概数>
 「特に成長を感じた経験」として「ゼミ・研究室活動」を選択しているが、
   a)具体的経験なしor 無回答者 393名(22.1%)  内、無回答者 134名(7.5%)
   b)自由記述では異なる項目に関する内容のみを記述している者 309名(17.3%)
   c)自由記述内容分類対象回答者総数  1,079名(60.6%)

 
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