教育フォーカス

【特集14】「問いのデザイン」でアクティブ・ラーニングの「種」を育てる

【導入編:1】課題提起 [3/4]

Ⅲ.導入時の工夫 1 
― 全教職員が研修会に参加し課題認識を共通に持つ ―

今回、ノートルダム女学院中学高等学校で行った研修では、それらのポイントを踏まえ、いくつかの仕掛けをしました。

一つめは、全教職員が一堂に会して参加してもらうことです。中学校・高校の教科担当はもちろん、養護教諭、事務職員、スクールカウンセラーにも参加してもらいました。校内で生徒に接する全員が同じ経験をすれば、アクティブ・ラーニングについて共通の土台が築けます。今後、アクティブ・ラーニングについて活動する時に、お互いの話が理解しやすくなるでしょう。

これは、校外の研修についてもいえることです。例えば、私が教育委員会主催の研修会で講師となった時には、各校から最低2人、できれば3人以上が参加いただくようにお願いしています。研修の内容を校内に広めようとしても、参加者が1人だけでは孤軍奮闘になってしまい、そのうちに日常業務に追われてモチベーションも落ちてしまいます。2人であれば相談して進めることができますし、3人なら他の人に説明する時も、多様な説明が可能となり、説得力が増すことでしょう。

Ⅳ.導入時の工夫 2 
― 教員4人をコアメンバーにし自身の実践例を中心に議論 ―

二つめは、栗本嘉子校長推薦の4人の先生に、「コアメンバー」として事前打ち合わせから参加してもらったことです。当日はコアメンバーが行うアクティブ・ラーニングを発表してもらい、そのアイデアを広げるというグループワークを行いました。ねらいは二つあります。まず、コアメンバーに研修後、校内でアクティブ・ラーニングを浸透・定着を図る役割を担ってもらうためです。研修内容にどんなに心を打たれたとしても、時間が経てば忘れてしまう人のほうが多いものです。研修に当事者としてかかわることで、研修内容を広める起点になっていただくことを期待しました。もう一つは、参加者が同僚の先生がアクティブ・ラーニングをしていると知ることで、「自分もできる」、あるいは「自分もやっていたのではないか?」と振り返ってもらいやすいと考えたからです。

コアメンバーには打ち合わせの時にアクティブ・ラーニングについて説明しましたが、4人とも初耳とのことでした。そこで、「生徒が目を輝かせた授業は何でしたか」「先生のとっておきの授業を教えてください」などと尋ねていくと、それぞれに生徒に考えさせる活動を行っていました。それを発表してもらったのです。

これには、参加者に、アクティブ・ラーニングを自分事ととして捉えてもらうというねらいがありました。私は講師を務める際、参加者にできるだけ自分事として取り組んでほしいと、壇上には立たず、フロアを歩きながら参加者との距離を縮めるようにしています。それでも、教えるという立場を変えることは簡単ではありません。しかし、他でもない、同僚の先生が実践例を話したことで、その課題の大部分が解決したのです。研修会では"現場を知らない"講師が話すことに反発する先生もいますが、コアメンバーの存在は、そういうマイナス面を消すこともできるでしょう。

事前打ち合わせなど、通常の研修よりも準備に時間はかかりましたが、それ以上の成果がありました。授業と同様、研修時間をフルに使い、他校事例などの説明をして教えることのほうが効率が良さそうに見えますが、研修後の定着や先生同士の試行錯誤を考えると、同じ現場の先生の実践を中心にした議論のほうがよいと実感しました。

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