教育フォーカス

 

【特集15】アクティブ・ラーニングを活用した指導と評価研究
 ~授業レポート~

[第1回] 批判的思考力を育む~玉川学園高等部 国語科と理科で創出した「理系現代文」の実践  [5/6]

話し合いを活性化して思考を深めるサポートの工夫

続いて、生徒を3人ずつのグループに編成し、10分間で、メンバー同士で各自の答えと理由を述べあう活動をさせ、問い毎にグループとしての答えを1つにまとめさせた。小林香奈子先生からは、「相手の意見をしっかりと聞くように」「自分と友だちの考えが混ざらないよう、ワークシートに書き込む色を変えるように」といった指示が出された。

「どの学校でも言っていると思いますが、日頃から自分と他者の意見を区別して書くように指導しています。自分の意見を消してしまうと、どのように考えて最終的な意見にたどり着いたのか、思考プロセスが分からなくなるからです」(小林香奈子先生)

ポイントを指摘し、議論をサポート

ポイントを指摘し、議論をサポート 

グループワークの間も机間巡視を行い、各グループの議論の様子を観察した。
 「全員が話し合いに参加しているかを確認し、停滞しているグループには、生徒一人ひとりが意見と理由を述べ合うことなど対話のルールを改めて伝えます。議論が進んでいるグループには、わざと反対の視点から問いかけをしたり、論理の穴を突いたりして、より深い思考を促します」(小林香奈子先生)

生徒が教員を呼んで質問する場合もある。
 「生徒は、国語と理科のどちらの観点からのアドバイスがほしいかによって、相談する教員を選んでいます。さらに、セカンドオピニオンのように、複数の教員に同じ質問をする生徒もいます。これは、1つの意見を単純に受け入れるのではなく、熟考していることの表れと捉えています」(島津先生)

その後、グループの代表者が問1から順にグループの考えを発表した。小林香奈子先生からは、「もし自分たちの考えと全く違うようなら、自分たちの考えを言ってください」という指示があった。今回、生徒の考えが教員の予想以上にバラエティーに富んだため、各グループの発表を板書して、生徒に整理して見せた。

机間巡視をしながら生徒の様子を観察

机間巡視をしながら生徒の様子を観察 

すべてのグループが発表し終わると、小林慎一先生が、空欄の解答となる言葉を述べて、その根拠を説明した。

各グループの発表に対し、ほかのグループの生徒が意見や質問を述べる場面も見られた。例えば、問2の答えが一通り発表された後に、先生が「理由を知りたいものはありますか」と問いかけると、「『列車のガラスが黒く汚れていたので、黒く見えた』というグループがありましたが、黒ならなぜ汚れていると言えるのでしょうか。どこに根拠がありますか」という質問があった。すると、その解答を述べたグループの生徒が、「ガラス越しに見ているので、黒いということはガラスが汚れている可能性があるからです」と根拠を示した。

最初に自分なりの考えを持ち、それをグループワークでブラッシュアップしていることが、他グループの意見への高い関心や対話への意欲につながっているようだ。最後に、問4を宿題として後日提出するように指示をして、授業は終了した。


■まとめ(この日の授業展開)

 時間経過 活動内容 指導内容
11時45分~11時55分 漢字テスト  - 
~12時5分 個々に課題文を読む。  - 
~12時10分 ワークシートの問1~3に自分の考えを書く。 「問2、問4は採点します」と、評価の観点を明確にした。
~12時20分 3人グループになり、問1~3の答えと理由を述べ合い、グループとしての考えをまとめる。 「相手の意見をしっかりと聞くように」「自分と友だちの考えが混ざらないよう、ワークシートに書き込む色を変えるように」という指示が出された。
~12時30分 各グループの代表者が答えを発表。 「理由を知りたいものはありますか」と、意見や質問を促す。
12時35分 授業が終了。先生から問4は宿題と伝えられる。  - 

 
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